THE BEGINNING

開業までのこと

佐藤陸斗と申します。情報系の学部に入って、1年目にひとつだけ単位を落としました。 プログラミング基礎です。自分には向いていないな、と思っていました。

それから2年後、駅から車で20分かかる福島市のはずれに、スタッフのいない写真館を開けました。 予約が入ると、その時間だけドアの鍵が開きます。中に入って自分で撮って、写真もその場で持ち帰る。 最初から最後まで、店員と顔を合わせません。東北では初めての完全無人の写真館だそうです。

開発のやり方について正直に書いておくと、コードの大半はAIのコーディング支援に頼っています。 私が受け持っているのは、何を作るかを決めること、できたものを店で実際に試すこと、 おかしいところを見つけて直してもらうことです。 エンジニアの方から見れば危なっかしいやり方だと思いますし、その自覚があるので、 決済やドアの解錠のような失敗できない部分ほど、時間をかけて動作確認をしています。

2023年2月の店内。壁は合板が貼られただけで、三脚とカメラ、パイプ椅子しか置かれていない
2023年2月。合板を貼っただけの部屋に、三脚が1本だけ置いてありました。ここが出発点です。

2年1ヶ月の記録

  1. 2022.04

    大学入学

    情報系の学部に入学。1年次に唯一落とした単位が「プログラミング基礎」だった。

  2. 2023.01

    構想開始

    駅から車で20分かかる場所で、人を雇わずに成立する店を考え始める。ここが起点。

  3. 2024.12.08

    1日限りのプレオープン

    クリスマスマーケットに1日だけ出店。本開業の前に、実際のお客さんで通しで試した。

  4. 2025.02.11

    グランドオープン

    セルフ写真館GENICA 開業。東北初の完全無人の写真館。予約・解錠・撮影・データ受け渡しまで、店に人がいない状態で完結する。

  5. 2025.02〜11

    メディア掲載10件

    福島経済新聞を皮切りに、テレビ3局・新聞・雑誌・Webに掲載。生中継も入った。

  6. 2025.03.23

    イベント出店

    本宮市の福島ダイハツ本宮まゆみ店で開かれた「ふくしまるしぇ」に出店。無人の店を、人のいる会場へ持ち出した日。普段は店まで来ない人に触ってもらえる機会になった。

  7. 2026.01

    卒業論文の提出

    自分の店を題材に「無人店舗のユーザビリティと技術成熟度モデル」をまとめた。利用者アンケート100件と、他2店舗への取材を含む。

  8. 2026.03

    大学卒業

    在学中に開業し、卒業。現在はプライム上場企業に勤めながら運営を続けている。

2023年9月、床に置いたモニターにカメラの映像を映して撮影テストをしている様子
2023年9月。カメラをパソコンに繋いで、映る画をモニターで確かめていた頃です。

使ってきた道具の変遷

いわゆるバイブコーディングの2年間です。どれが一番いいかという話より、どこでつまずいて次へ移ったかのほうが参考になると思うので、乗り換えた理由も書いておきます。

  1. 01

    チャットにコードを直貼り

    構想期。動くものを一度も作ったことがなかった頃。

    できた「そもそも何を作ればいいのか」が言語化できるようになった。エラー文をそのまま貼れば意味を教えてくれるので、詰まって止まる時間が消えた。

    限界ファイルが増えると破綻する。チャットは今どんなコードがあるかを知らないので、毎回こちらが状況を説明し直すことになり、その説明のほうが長くなった。

  2. 02

    v0.dev

    画面を作り始めた頃。

    できた指示するとその場で画面が出てくる。デザインの引き出しがない人間でも、見た目が成立したものから始められるのが大きかった。

    限界画面は作れても、その裏側でデータを持ったり外の機器とやり取りする部分は作れない。表と裏がつながらない。

  3. 03

    Cursor

    店内キオスクや写真の受け渡しを組み始めた頃。

    できたAIが自分のリポジトリを読んだ状態で書いてくれる。ここで初めて「説明しなくていい」状態になり、開発速度が別物になった。

    限界一度に任せられる範囲が、だいたい1ファイルぶん。大きな作り替えは自分で分解する必要があった。

  4. 04

    Antigravity

    複数のサービスを並行で回し始めた頃。

    できた指示を出して、こちらが見ていない間に手を動かしてもらう感覚に慣れた。

  5. 05

    Claude Code

    現在。店の運営そのものに使っている。

    できたコードを書くだけの道具ではなくなった。アクセス解析を読ませる、全国の掲載店が閉店していないか調べさせる、空調の制御が止まっている原因を追わせる。本業をやりながら店を回せているのは、この部分が大きい。


つくったもの

店に人がいないということは、人がやっていたことを全部どこかに移すということでした。 受付も、撮影の案内も、写真の受け渡しも。その移し先を、AIの力を借りながらひとつずつ形にしました。 規模の目安として、gitで数えた行数とコミット数を添えています(2026年8月8日時点・リポジトリは非公開です)。ここに載せているのは公開済みのものだけで、未公開のプロダクトは数に入れていません。未公開分も含めた開発全体の記録は、開発備忘録のカテゴリで別途公開しています。

  • 16,894行
    456commits

    AI Image Studio見に行く

    撮った写真の背景を、生成AIで別の場所に差し替える。部屋は無人の小さな一室ひとつしかないのに、背景のバリエーションだけは無限になる。

    Next.js / 画像生成AI / Prisma / Stripe

  • 15,167行
    130commits

    店内キオスク

    お客さんが自分で撮影・選別・書き出しまでを操作する端末。ここが分かりにくいと、聞ける相手がいないので無人店はその場で詰む。作り込みの大半は機能ではなく「迷わせないこと」に使っている。

    Next.js / タッチ操作前提のUI / QRコード

  • 9,467行
    153commits

    写真受け渡し

    撮った写真をその場でお客さんの手元に渡す。画面のQRを読むと自分のスマホに入る。人が郵送もUSBの手渡しもしないための仕組み。

    Next.js / クラウドストレージ / QRコード

  • 81,981行
    761commits

    サイト・Webサービス群見に行く

    店のサイト、全国のセルフ写真館データベース、白フチフォトジェネレーターなどの無料ツール。制作会社には頼まず、AIの支援を受けながら自分で運用している。

    Next.js / SSG・ISR / GA4・Search Console連携

  • 1,356行
    2commits

    店内サイネージ

    店内の案内表示。掲示物を貼り替えに行かなくていいように、遠隔で差し替えられる。片道の移動時間がそのまま消える。

    Next.js / QRコード

2024年12月のプレオープン時の店内。白い背景紙、ストロボ、アンブレラ、操作用のモニターが並んでいる
2024年12月、プレオープン。背景紙と照明が入り、ようやく写真館の形になりました。
セルフ写真館GENICAの店内。左に電球付きの鏡とメイクカウンター、中央にストロボとソフトボックス、右に白い背景紙とアンブレラが並び、壁掛けのディスプレイにGENICAのロゴが表示されている
そして現在。同じ場所です。合板に三脚1本だった部屋が、ここまで来ました。

卒業論文で、自分の店を扱いました

開業したのは大学3年の終わりで、4年生のときに卒業論文の題材として自分の店を扱いました。 タイトルは「無人店舗のユーザビリティと技術成熟度モデルセルフ写真館GENICAを事例としたLevel3無人店舗の動線と人的サポートの分析」です。

小売業向けに提唱されていた無人店舗の成熟度モデルを、サービス業向けに作り直し、 当店に加えて無人ホステルと無人レンタルスタジオにも取材して比較しました。 利用者アンケートは有効回答100件。使いやすさのスコアが、オープン直後の63.07点から 仕様変更後には83.25点まで上がったことが数字で確認できました。


店の外でも

納屋カフェ椿地方の個人経営カフェのDX

SNS運用を引き受け、Instagramのフォロワーを1,500人から4,500人超まで伸ばした。12月の恒例イベント「Christmas Market 2025」では、出店20組をまとめた特設サイトと、来場者がスマホで会場を巡る電子スタンプラリーを作って運営に入っている。自分の店ではない、他人の商売でも同じやり方が効くかを試した場所。


同じことを考えている方へ

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