THE BEGINNING
開業までのこと
佐藤陸斗と申します。情報系の学部に入って、1年目にひとつだけ単位を落としました。 プログラミング基礎です。自分には向いていないな、と思っていました。
それから2年後、駅から車で20分かかる福島市のはずれに、スタッフのいない写真館を開けました。 予約が入ると、その時間だけドアの鍵が開きます。中に入って自分で撮って、写真もその場で持ち帰る。 最初から最後まで、店員と顔を合わせません。東北では初めての完全無人の写真館だそうです。
開発のやり方について正直に書いておくと、コードの大半はAIのコーディング支援に頼っています。 私が受け持っているのは、何を作るかを決めること、できたものを店で実際に試すこと、 おかしいところを見つけて直してもらうことです。 エンジニアの方から見れば危なっかしいやり方だと思いますし、その自覚があるので、 決済やドアの解錠のような失敗できない部分ほど、時間をかけて動作確認をしています。
2年1ヶ月の記録
大学入学
情報系の学部に入学。1年次に唯一落とした単位が「プログラミング基礎」だった。
構想開始
駅から車で20分かかる場所で、人を雇わずに成立する店を考え始める。ここが起点。
1日限りのプレオープン
クリスマスマーケットに1日だけ出店。本開業の前に、実際のお客さんで通しで試した。
グランドオープン
セルフ写真館GENICA 開業。東北初の完全無人の写真館。予約・解錠・撮影・データ受け渡しまで、店に人がいない状態で完結する。
メディア掲載10件
福島経済新聞を皮切りに、テレビ3局・新聞・雑誌・Webに掲載。生中継も入った。
大学卒業
在学中に開業し、卒業。現在はプライム上場企業に勤めながら運営を続けている。
使ってきた道具の変遷
いわゆるバイブコーディングの2年間です。どれが一番いいかという話より、どこでつまずいて次へ移ったかのほうが参考になると思うので、乗り換えた理由も書いておきます。
チャットにコードを直貼り
構想期。動くものを一度も作ったことがなかった頃。
できた「そもそも何を作ればいいのか」が言語化できるようになった。エラー文をそのまま貼れば意味を教えてくれるので、詰まって止まる時間が消えた。
限界ファイルが増えると破綻する。チャットは今どんなコードがあるかを知らないので、毎回こちらが状況を説明し直すことになり、その説明のほうが長くなった。
v0.dev
画面を作り始めた頃。
できた指示するとその場で画面が出てくる。デザインの引き出しがない人間でも、見た目が成立したものから始められるのが大きかった。
限界画面は作れても、その裏側でデータを持ったり外の機器とやり取りする部分は作れない。表と裏がつながらない。
Cursor
店内キオスクや写真の受け渡しを組み始めた頃。
できたAIが自分のリポジトリを読んだ状態で書いてくれる。ここで初めて「説明しなくていい」状態になり、開発速度が別物になった。
限界一度に任せられる範囲が、だいたい1ファイルぶん。大きな作り替えは自分で分解する必要があった。
Antigravity
複数のサービスを並行で回し始めた頃。
できた指示を出して、こちらが見ていない間に手を動かしてもらう感覚に慣れた。
Claude Code
現在。店の運営そのものに使っている。
できたコードを書くだけの道具ではなくなった。アクセス解析を読ませる、全国の掲載店が閉店していないか調べさせる、空調の制御が止まっている原因を追わせる。本業をやりながら店を回せているのは、この部分が大きい。
つくったもの
店に人がいないということは、人がやっていたことを全部どこかに移すということでした。 受付も、撮影の案内も、写真の受け渡しも。その移し先を、AIの力を借りながらひとつずつ形にしました。 規模の目安として、gitで数えた行数とコミット数を添えています(リポジトリは非公開です)。
AI Image Studio見に行く
撮った写真の背景を、生成AIで別の場所に差し替える。部屋は無人の小さな一室ひとつしかないのに、背景のバリエーションだけは無限になる。
店内キオスク
お客さんが自分で撮影・選別・書き出しまでを操作する端末。ここが分かりにくいと、聞ける相手がいないので無人店はその場で詰む。作り込みの大半は機能ではなく「迷わせないこと」に使っている。
写真受け渡し
撮った写真をその場でお客さんの手元に渡す。画面のQRを読むと自分のスマホに入る。人が郵送もUSBの手渡しもしないための仕組み。
サイト・Webサービス群見に行く
店のサイト、全国のセルフ写真館データベース、白フチフォトジェネレーターなどの無料ツール。制作会社には頼まず、AIの支援を受けながら自分で運用している。
店内サイネージ
店内の案内表示。掲示物を貼り替えに行かなくていいように、遠隔で差し替えられる。片道の移動時間がそのまま消える。
店の外でも
納屋カフェ椿
SNS運用を引き受け、Instagramのフォロワーを1,800人から4,500人まで伸ばした。12月の恒例イベント「Christmas Market 2025」では、出店20組をまとめた特設サイトと、来場者がスマホで会場を巡る電子スタンプラリーを作って運営に入っている。自分の店ではない、他人の商売でも同じやり方が効くかを試した場所。