NOTES
落雷の瞬電で無人店舗のPCが落ちた — 復旧までにやったことと、次にやること
2026年8月8日、落雷による瞬電で無人セルフ写真館のPCが停止しました。お客様の利用中に何が起き、どう復旧したのか。無人店舗で停電・瞬電に備えるための具体的な対策(BIOSの自動起動設定・UPS・遠隔での状態把握)まで、実際の一件をそのまま記録します。
8月8日に起きたこと
2026年8月8日。8が並ぶ日ということもあってか、この日は多くのお客様にご利用いただきました。 今日も問題なく回っているな、と思っていた矢先に、スマホへ雨雲の通知が届きます。 このときはまだ「どのくらい降るんだろう」という程度の受け止め方でした。
雨は想像よりはるかに強く降りました。福島市内では冠水した場所があり、 この日に予定されていた市の夏の風物詩「福島わらじまつり」も中止になっています。 店のある敷地では母屋が雨漏りし、ほどなくして落雷による瞬電が起きました。 照明が一瞬落ちて、すぐ戻る。その場では、その程度の出来事に見えました。
この瞬間、店舗はお客様が利用中でした。無人店舗にとって、 もっとも影響が大きいタイミングです。
急いで確認に向かいました。到着した時点で電気そのものはすでに復旧していましたが、PCの電源が落ちたままになっていました。 電源を入れ直し、あわせて他の機材も一通り確認しています。
止まったもの・止まらなかったもの
停電というと店の全部が同時に止まる印象がありますが、実際に起きたのは そうではありませんでした。機器ごとに、電源が戻ったときの振る舞いが違います。
後日、PCのイベントログと各プロセスのログを突き合わせて、 何が何時に起きていたのかを1秒単位で復元しました。
| 時刻 | 出来事 |
|---|---|
| 15:53:01 | 瞬電。PCが不正終了(システムログに「予期しないシャットダウン」) |
| 15:53〜15:56 | PCは停止したまま。自動では起動しなかった |
| 15:56:34 | 現地で電源ボタンを押す。OS起動 |
| 15:58:00 | 常駐の監視プロセスが起動 |
| 15:58:18 | カメラの接続に成功 |
| 15:58:18〜20 | 保存先・シャッター方式・ホワイトバランス・画角を自動で適用 |
| 15:58:27 | 撮影画面が起動 |
| 15:58:34 | 1枚目の撮影に成功 |
| 区間 | 時間 | 内訳 |
|---|---|---|
| 瞬電 → 電源ボタンを押すまで | 3分33秒 | 人が現地に着くまでの時間 |
| 電源ON → 撮影可能まで | 2分00秒 | すべて自動 |
| うち OS起動 → カメラ接続 | 1分44秒 | 自動 |
| うち カメラ接続 → 設定の適用完了 | 2秒 | 自動 |
つまり復旧を止めていたのは「PCの電源ボタンを押す人」だけでした。 電気は戻っている、システムも自動で立ち上がる。それでも、 押す人がいないという一点で3分33秒のあいだ営業が止まっていたことになります。
つまり復旧を止めていたのは「PCの電源ボタンを押す人」だけでした。 電気は戻っている、システムも自動で起動する設計になっている。それでも、 押す人がいないという一点で営業が止まる状態になっていたわけです。
なぜ数分で撮影可能に戻せたのか
PCの電源を入れると、2分00秒で撮影可能な状態まで戻りました。 手作業でアプリを立ち上げたり、設定を入れ直したりする必要はありません。
とくに効いたのはカメラの設定です。接続に成功してから2秒でシャッター方式・ホワイトバランス・画角がすべて適用されていました。 この3つはどれも、間違ったまま撮ると写真が使い物にならなくなる項目です。 有人店なら「スタッフが設定を確認する」工程ですが、そこに人はいません。
これは偶然ではなく、無人店舗として作るときに決めていたことです。 スタッフがいない前提だと、「起動したあと誰かが操作する」工程が一つでも残っていれば、 そこで必ず止まります。だから起動から撮影可能までは、人の操作をゼロにしてあります。
今回の数字がそれをはっきり示しています。自動の区間は2分00秒。人が必要だった区間は3分33秒。 現地でやったのは電源ボタンを押すことだけなのに、 復旧時間の6割以上をそこが占めていました。
ここが手作業だらけだったら、到着してからさらに時間がかかっています。無人店舗の復旧力は、事故が起きてから考えるものではなく、 平時にどこまで自動化しておいたかで決まります。
残った穴 — 復電してもPCは起きない
今回はたまたますぐ動ける状況だったので、現地で電源を入れて事なきを得ました。 ただ、これは再現性のある復旧手段ではありません。 無人店舗の運営者が常に店の近くにいるとは限らないからです。
残っている穴ははっきりしています。通電が戻ってもPCが自動で起動しないという一点です。
ログの数字がそれを裏づけています。電源さえ入れば、あとは全部自動で2分00秒。この設定ひとつが入っていれば、今回のトラブルは誰も動かないまま、 瞬電から2分ほどで自然に復旧していたことになります。 実際には、電源ボタンを押すためだけに人が現地へ向かいました。
無人店舗が停電に備える3つの対策
同じ状況に備えるなら、対策は3つに整理できます。守れる範囲がそれぞれ違うので、 どれか一つで足りるという性質のものではありません。
1. BIOS/UEFIで「通電時に自動起動」を有効にする
もっとも安く、もっとも効く対策です。多くのPCのBIOS/UEFIには「AC電源が復帰したときにどうするか」という設定項目があり、 既定値は「電源オフのまま」になっています。
項目名はメーカーで違い、「Restore AC Power Loss」「State After G3」「AC Back」「AC Power Recovery」などと表記されます。Power や Advanced のメニューの中にあることが多いです。
| 設定値 | 通電が戻ったときの動作 |
|---|---|
| Power Off(多くの機種の初期値) | 電源オフのまま。人が押しに行くまで止まる |
| Power On | 自動的に起動する。無人店舗ではこれ |
| Last State | 停電直前の状態を再現する |
費用はゼロ、作業は再起動して設定画面に入るだけです(起動時に Delete か F2 を押します)。無人店舗でPCを使っているなら、開業前に確認しておく価値があります。
BIOSの設定はOSの外側にあるため、リモートデスクトップやSSHでは変更できません。 無人店舗の設定で「現地に行かないとできない」数少ない作業のひとつです。 だからこそ、次に店へ行く用事があるときにまとめて済ませておく価値があります。
当店で使っているのはGMKtec NUCBOX G10PROというミニPCです。 省スペースで置き場所を選ばず、無人店舗の受付機としては扱いやすい機種ですが、 この設定は確認していませんでした。通電が戻っても起動しなかったという結果から見て、初期値の「電源オフのまま」だったと考えられます。今回の一件で最初に直すのはここです。
2. UPS(無停電電源装置)で、そもそも落とさない
1の設定が「落ちたあとに起こす」対策なのに対し、UPSはそもそも落とさないための対策です。 利用中のお客様から見れば、何も起きなかったことになります。
ここで考えるべきは「何分持たせたいのか」で、答えによって製品がまったく変わります。
- 1今回のような瞬電だけを防ぎたい — 数分持てば十分。PC1台ぶんの小型UPSで足り、価格も抑えられる
- 2停電が長引いても営業を続けたい — 照明や空調まで含めて数時間〜数日。この規模になると据置型の蓄電池の領域
今回の一件だけを見れば1で足ります。ただ、今年の大雨で市内が冠水し、 まつりまで中止になったことを思うと、長時間の停電を「起きない前提」で設計していいのかは考え直すところです。 無人店舗は誰も駆けつけない前提で作るものなので、 電源が長く止まったときに何を諦めて何を維持するのかは、決めておいたほうがいい判断だと思っています。
なお、UPSが守るのは電源だけです。機器のフリーズや、ネットワーク側の障害には効きません。 そこは3の話になります。
3. 止まったことに、遠隔で気づけるようにする
今回は雷という分かりやすいきっかけがあったので気づけました。 きっかけが無いまま静かに止まっていたら、次のお客様が来るまで気づけなかった可能性があります。
無人店舗で本当に怖いのは、止まったことに誰も気づかない時間です。 機器から定期的に生存確認を送らせておけば、途絶えた時点で通知が出せます。 これは今回に限らず、無人運営の基礎体力にあたる部分です。
| 対策 | 守れるもの | 守れないもの | 費用感 |
|---|---|---|---|
| BIOSの自動起動設定 | 復電後に人が行かずに済む | 落ちている間の営業 | 無料 |
| 小型UPS | 瞬電では落ちなくなる | 長時間の停電・機器の不具合 | PC1台ぶんなら安価 |
| 据置型の蓄電池 | 長時間の停電でも営業を続けられる | 機器の不具合・通信断 | 容量しだいで高額 |
| 遠隔での生存確認 | 気づかない時間をなくす | 復旧そのもの | 自作なら実質無料 |
イレギュラーは、起きてから設計に足す
無人店舗をやっていると、こういうイレギュラーがときどき起こります。 そして正直なところ、起こりうること全部を開業前に想定するのは無理です。 今回の落雷にしても、備えるべきリストに最初から入れていたかというと、入っていませんでした。
当店でこれまでに実際に起きたものを並べると、原因も対策も毎回違います。
- 空調の遠隔制御が10日間止まり、室温が34℃を超えていた(原因:連携キーの失効)
- 撮影案内タブレットの動作が極端に遅くなった(原因:長期間の連続稼働)
- 落雷による瞬電でPCが停止した(今回)
共通しているのは、どれも「起きてみるまで思いつかなかった」ことです。 だとすれば、完璧な想定リストを作ろうとするより、 起きたイレギュラーを一つずつ設計に足していくほうが現実的だと考えています。
- 1起きたことを、原因まで含めて記録する
- 2次に同じことが起きたとき、人が動かずに済む形にする
- 3気づけなかったなら、気づく仕組みのほうを先に足す
今回でいえば、1は本記事、2はBIOSの自動起動設定、3は生存確認にあたります。 こうして一つずつ埋めていくことでしか、無人店舗は強くならないと思っています。
無人店舗ラボでは、実際に運営している完全無人のセルフ写真館で起きたことを、 うまくいかなかったものも含めてそのまま記録しています。 無人化についてのご相談はLINEのテキストで受け付けています。
よくある質問
瞬電(しゅんでん)とは何ですか?
落雷などが原因で、ごく短時間だけ電圧が下がったり供給が途切れたりする現象です。停電と違って数十ミリ秒〜数秒で復旧するため、照明はまばたきした程度にしか見えません。ただしパソコンや一部の電子機器にとっては電源が切れたのと同じで、そのまま停止します。復旧が早いぶん「停電があった」と気づかれにくいのが厄介な点です。
無人店舗で停電が起きたら、お客様はどうなりますか?
業態によります。当店(セルフ写真館)の場合、扉の解錠と撮影の操作でそれぞれ別の機器を使っているため、影響範囲は機器ごとに違いました。重要なのは「何が止まると営業が止まるのか」を機器単位で洗い出しておくことです。全部が同時に死ぬ設計にしていなければ、被害はその一部で止まります。
停電から復旧したとき、PCは自動で起動しますか?
初期設定のままでは起動しません。多くのPCはBIOS/UEFIに「AC電源復帰時の動作」という設定項目があり、既定値が「電源オフのまま」になっているためです。これを「電源オン」に変更しておくと、通電が戻った時点で自動的に起動します。無人店舗では、この設定ひとつで現地に行く必要があるかどうかが変わります。
無人店舗にUPS(無停電電源装置)は必要ですか?
「何分持たせたいか」で選ぶものが変わります。今回のような瞬電を防ぐだけならPC1台ぶんの小型UPSで足り、数分持てば十分です。停電が長引いても照明や空調ごと営業を続けたい場合は、据置型の蓄電池の領域になり、必要な容量も費用も一段上がります。いずれにせよUPSが守るのは電源だけで、機器のフリーズや通信断は守ってくれません。BIOSの自動起動設定や遠隔での状態把握と組み合わせて考える必要があります。
無人店舗のトラブルは、どのくらいの頻度で起きますか?
頻度そのものより「種類が事前に読めない」ことが問題です。当店で実際に起きたものだけでも、空調制御の停止、案内タブレットの動作低下、そして今回の落雷による瞬電と、原因も対策もすべて違いました。想定リストを完璧に作ってから開業することはできないので、起きたイレギュラーを一つずつ設計に足していく運用が現実的です。
本記事の店舗数・分布などの数値は、当サイトが継続運営する全国セルフ写真館ディレクトリ (全国セルフ写真館 完全ガイド) の調査に基づく「GENICA調べ」の一次データです。出典として「セルフ写真館GENICA調べ (genica-photo.com)」と明記いただければ、メディア・ブログ・資料への引用を歓迎します。
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