NOTES

・ 約4分で読めます

【開発備忘録】無人店舗運営システムで「ユーザがちゃんと使えたか」を可視化する機能を実装した話

店が敷いたレールに、お客様が乗って使えたか。外れたらトラブル。それを、人が映像を見るのではなく、システムの記録で測る。

この記事の要点

  • これまでは、トラブル・問い合わせ・アンケートで断片的にしか分からなかった。予約から利用終了まで一貫したシステムの中なので、ずっと測れる。だから実装した
  • 店が設けたレールにお客様が乗って、問題なく使えたか。レールから外れる=トラブル。1 回の利用を「自分で使えた/つまずいたが自分で戻れた/人が助けた/終わらなかった」の 4 つに分ける
  • 目的は、どんなお客様にどんな傾向があるかを細かく分けて、改善に役立てること。店を増やすと多様なお客様が来る。その前に傾向を掴んでおけば、先回りできる
目次(8項目)
  1. 01なぜ作ったのか
  2. 02「レール」の意味
  3. 03何を測っているのか
  4. 04一度作り直した
  5. 05作るときに参考にしたもの
  6. 06目的
  7. 07実際どうか
  8. 08会わないからこそ、プライバシー

福島市で完全無人のセルフ写真館を運営しています。店の予約・決済・解錠・写真の受け渡しは、自分で作った運営システム「GENICA OS」で動いています。

そこに、お客様がちゃんと使えたかを可視化する「レールスコア」という機能を実装しました。当店のオリジナルの指標なので、何なのか、なぜ作ったのかを備忘録として残します。

今までは、トラブルが起きたかどうか、問い合わせがあったかどうか、アンケートの回答結果など、断片的にしかお客様の利用状況を把握できていませんでした。

しかし、予約から利用終了まで、全て一貫したシステムの下で行われるので、ずっと計測できる。だから実装しました。

無人店舗で正常に使ってもらうには、店が設けたレールにお客様が乗って、問題なく使っていただくことが一番重要だと思っています。 レールから逸脱する=トラブル発生、という認識です。

予約

入店

撮影

受け取り

外れる=トラブル店が設けたレールにお客様が乗って、最後まで問題なく使えたか。外れたところがトラブルの起きたところ。

1 回のご利用ごとに、人の助けなしで最後まで使えたかを、システムの記録から判定して、次の 4 つのどれかに分けます。

人の助けなしで使えた(いちばん大事に見ている)

1

自分で使えた

つまずきなく、最後まで

2

自分で戻れた

つまずいたが、人の助けなしで最後まで

そうでなかった

3

人が助けた

店側が手を貸して、最後まで

4

終わらなかった

やるべきことが済まずに終わった

いちばん大事に見ているのは、人の助けなしで使えた回の割合です(上の「自分で使えた」と「自分で戻れた」)。 無人店舗なので、裏で人が助けて「使えた」ことにしてしまわないよう、人が手を貸した回は別に数えています。

  • つまずきは、どの工程で起きたかと、仕組みの不具合か、お客様の迷いかで分けて数える
  • 「お客様の迷い」は、お客様の落ち度ではなく、店の案内と動線の出来として読む
  • 案内をどこまで読んだか、のような「店の言うとおりに動いたか」は、参考には見るが結果には入れない(入れると、案内を増やすほど数字が良くなってしまうため)

この考え方は、私が卒業論文で整理した「無人店舗の段階」が下敷きになっています(無人店舗の Level 0〜4)。人が遠隔で助ける頻度が、段階の境目になる、という整理です。

最初の版は、工程ごとに配点を決めた 100 点満点の点数でした。それを 2026年10月3日に、今の「人の助けなしで使えたか」を軸にした形に作り直しています。理由は記録に残っている 3 つです。

  • 配点が主観で、あとから説明できなかった。入店の失敗を、ほかの加点で打ち消せてしまった
  • 「店の言うとおりに動いたか」と「使いやすかったか」が、同じ点数に混ざっていた
  • 人が助けた回を、正面から数えていなかった

作るときには、いろいろなものを参考にしました。何を参考にしたかは私も忘れていたので、設計の記録から拾い直しました。 使いやすさの国際規格や、Web サイトの体験の測り方など、無人店舗の外の考え方が多いです。

自分の卒業論文(無人店舗の段階 Level 0〜4)
段階の境目は「人が遠隔で助ける頻度」。最上位の条件は「異常が起きても自分で戻れる」。
「人が助けた」「自分で戻れた」を別に数える
ISO 9241-11(使いやすさの国際規格)
使いやすさを「目的を果たせたか・手間・満足」に分ける。
使えたか、時間、本人の感じ方を混ぜずに持つ
Google の Core Web Vitals(サイトの速さの指標)
点数にせず「基準を満たした割合」で見る。
主な物差しを、人の助けなしで使えた回の割合にする
OECD の合成指標の手引き
点数を足し合わせると、深刻な失敗がほかの点で隠れる。
100 点満点をやめた
Google の HEART(体験の測り方)
成功より、失敗ややり直しのほうが見つけやすい。
つまずきから測る
セルフレジの業界指標と、Amazon の Just Walk Out への指摘
人が裏で助けた回を「無人で使えた」に数えない。
人の介入は別に数える
サービスでお客様がつまずく場面の研究
つまずきは来店前・利用中・利用後のそれぞれで起きる。
どの工程で起きたかで分ける
グッドハートの法則
測るものを目標にすると、良い測り方でなくなる。
「店の言うとおりに動いたか」は結果に入れない
利用後の 1 問アンケート(SEQ)と、使いやすさの 10 問(SUS)
本人がかんたんだと感じたかを、決まった形で聞く

実際にどんな属性のお客様に、どのような傾向があるかを細かく分類し、改善に役立てるためです。 はじめてか 2 回目以降か、人数、家族・カップル・友だち、プランの長さ、時間帯、スマホの機種。あらゆるパターンで、それぞれの傾向があると思っています。

たとえば、案内の順番。事前の案内を見た人と見ていない人で、トラブルの発生率に相関があるのか。見た・見ていないだけでなく、複数人での利用ならトラブルの発生率が低い、ということがあるのか、などです。

POINT

店を増やすこととも関係があります。FC など店を増やす=利用者の母数が加速度的に増えるので、今以上に多様なお客様に利用いただくことになる。 その時に、各属性ごとの傾向を掴んでおけば、事前にカバーできるものがあると思っています。

管理画面で、週 2 ぐらいに見ています。

数字の中身は、ここでは書けません(企業秘密です)。ただ、数字を見て、お客様の利用の動線に手を入れたところはあります。

レールスコアは、人が映像を見て確かめるのではなく、予約・解錠・写真の受け取りなど、システムに残る記録で測っています。

実際にお客様と対面で接することがない以上、プライバシーを確保しつつ、利用状況を確認することが重要だと考えています。

予約から退店まで、店が自分で動く流れはGENICA OS の 8 つの場面にまとめています。同じようなことを考えている方は、LINE で気軽にどうぞ。

PR

よくある質問

レールスコアとは何ですか?

完全無人のセルフ写真館 GENICA の運営システム「GENICA OS」に入れた、お客様がちゃんと使えたかを測る機能です。1 回の利用ごとに、人の助けなしで使えたかを記録から判定し、「自分で使えた」「つまずいたが自分で戻れた」「人が助けた」「終わらなかった」の 4 つに分けます。

お客様を映像で見ているのですか?

いいえ。人が映像を見て確かめるのではなく、予約・解錠・写真の受け取りなど、システムに残る記録で測っています。お客様と対面で接することがない店なので、プライバシーを確保しつつ利用状況を確認することを大事にしています。

数字は公開していますか?

していません。分析の結果は社外に出していません。

ほかの記録


← 記録の一覧へ
【開発備忘録】無人店舗運営システムで「ユーザがちゃんと使えたか」を可視化する機能を実装した話|無人店舗ラボ