NOTES
【開発備忘録】無人店舗運営システムで「ユーザがちゃんと使えたか」を可視化する機能を実装した話
店が敷いたレールに、お客様が乗って使えたか。外れたらトラブル。それを、人が映像を見るのではなく、システムの記録で測る。
- これまでは、トラブル・問い合わせ・アンケートで断片的にしか分からなかった。予約から利用終了まで一貫したシステムの中なので、ずっと測れる。だから実装した
- 店が設けたレールにお客様が乗って、問題なく使えたか。レールから外れる=トラブル。1 回の利用を「自分で使えた/つまずいたが自分で戻れた/人が助けた/終わらなかった」の 4 つに分ける
- 目的は、どんなお客様にどんな傾向があるかを細かく分けて、改善に役立てること。店を増やすと多様なお客様が来る。その前に傾向を掴んでおけば、先回りできる
福島市で完全無人のセルフ写真館を運営しています。店の予約・決済・解錠・写真の受け渡しは、自分で作った運営システム「GENICA OS」で動いています。
そこに、お客様がちゃんと使えたかを可視化する「レールスコア」という機能を実装しました。当店のオリジナルの指標なので、何なのか、なぜ作ったのかを備忘録として残します。
今までは、トラブルが起きたかどうか、問い合わせがあったかどうか、アンケートの回答結果など、断片的にしかお客様の利用状況を把握できていませんでした。
しかし、予約から利用終了まで、全て一貫したシステムの下で行われるので、ずっと計測できる。だから実装しました。
無人店舗で正常に使ってもらうには、店が設けたレールにお客様が乗って、問題なく使っていただくことが一番重要だと思っています。 レールから逸脱する=トラブル発生、という認識です。
予約
入店
撮影
受け取り
1 回のご利用ごとに、人の助けなしで最後まで使えたかを、システムの記録から判定して、次の 4 つのどれかに分けます。
人の助けなしで使えた(いちばん大事に見ている)
自分で使えた
つまずきなく、最後まで
自分で戻れた
つまずいたが、人の助けなしで最後まで
そうでなかった
人が助けた
店側が手を貸して、最後まで
終わらなかった
やるべきことが済まずに終わった
いちばん大事に見ているのは、人の助けなしで使えた回の割合です(上の「自分で使えた」と「自分で戻れた」)。 無人店舗なので、裏で人が助けて「使えた」ことにしてしまわないよう、人が手を貸した回は別に数えています。
- つまずきは、どの工程で起きたかと、仕組みの不具合か、お客様の迷いかで分けて数える
- 「お客様の迷い」は、お客様の落ち度ではなく、店の案内と動線の出来として読む
- 案内をどこまで読んだか、のような「店の言うとおりに動いたか」は、参考には見るが結果には入れない(入れると、案内を増やすほど数字が良くなってしまうため)
この考え方は、私が卒業論文で整理した「無人店舗の段階」が下敷きになっています(無人店舗の Level 0〜4)。人が遠隔で助ける頻度が、段階の境目になる、という整理です。
最初の版は、工程ごとに配点を決めた 100 点満点の点数でした。それを 2026年10月3日に、今の「人の助けなしで使えたか」を軸にした形に作り直しています。理由は記録に残っている 3 つです。
- 配点が主観で、あとから説明できなかった。入店の失敗を、ほかの加点で打ち消せてしまった
- 「店の言うとおりに動いたか」と「使いやすかったか」が、同じ点数に混ざっていた
- 人が助けた回を、正面から数えていなかった
作るときには、いろいろなものを参考にしました。何を参考にしたかは私も忘れていたので、設計の記録から拾い直しました。 使いやすさの国際規格や、Web サイトの体験の測り方など、無人店舗の外の考え方が多いです。
- 自分の卒業論文(無人店舗の段階 Level 0〜4)
- 段階の境目は「人が遠隔で助ける頻度」。最上位の条件は「異常が起きても自分で戻れる」。
- 「人が助けた」「自分で戻れた」を別に数える
- ISO 9241-11(使いやすさの国際規格)
- 使いやすさを「目的を果たせたか・手間・満足」に分ける。
- 使えたか、時間、本人の感じ方を混ぜずに持つ
- Google の Core Web Vitals(サイトの速さの指標)
- 点数にせず「基準を満たした割合」で見る。
- 主な物差しを、人の助けなしで使えた回の割合にする
- OECD の合成指標の手引き
- 点数を足し合わせると、深刻な失敗がほかの点で隠れる。
- 100 点満点をやめた
- Google の HEART(体験の測り方)
- 成功より、失敗ややり直しのほうが見つけやすい。
- つまずきから測る
- セルフレジの業界指標と、Amazon の Just Walk Out への指摘
- 人が裏で助けた回を「無人で使えた」に数えない。
- 人の介入は別に数える
- サービスでお客様がつまずく場面の研究
- つまずきは来店前・利用中・利用後のそれぞれで起きる。
- どの工程で起きたかで分ける
- グッドハートの法則
- 測るものを目標にすると、良い測り方でなくなる。
- 「店の言うとおりに動いたか」は結果に入れない
- 利用後の 1 問アンケート(SEQ)と、使いやすさの 10 問(SUS)
- 本人がかんたんだと感じたかを、決まった形で聞く
実際にどんな属性のお客様に、どのような傾向があるかを細かく分類し、改善に役立てるためです。 はじめてか 2 回目以降か、人数、家族・カップル・友だち、プランの長さ、時間帯、スマホの機種。あらゆるパターンで、それぞれの傾向があると思っています。
たとえば、案内の順番。事前の案内を見た人と見ていない人で、トラブルの発生率に相関があるのか。見た・見ていないだけでなく、複数人での利用ならトラブルの発生率が低い、ということがあるのか、などです。
店を増やすこととも関係があります。FC など店を増やす=利用者の母数が加速度的に増えるので、今以上に多様なお客様に利用いただくことになる。 その時に、各属性ごとの傾向を掴んでおけば、事前にカバーできるものがあると思っています。
管理画面で、週 2 ぐらいに見ています。
数字の中身は、ここでは書けません(企業秘密です)。ただ、数字を見て、お客様の利用の動線に手を入れたところはあります。
レールスコアは、人が映像を見て確かめるのではなく、予約・解錠・写真の受け取りなど、システムに残る記録で測っています。
実際にお客様と対面で接することがない以上、プライバシーを確保しつつ、利用状況を確認することが重要だと考えています。
予約から退店まで、店が自分で動く流れはGENICA OS の 8 つの場面にまとめています。同じようなことを考えている方は、LINE で気軽にどうぞ。
よくある質問
レールスコアとは何ですか?
完全無人のセルフ写真館 GENICA の運営システム「GENICA OS」に入れた、お客様がちゃんと使えたかを測る機能です。1 回の利用ごとに、人の助けなしで使えたかを記録から判定し、「自分で使えた」「つまずいたが自分で戻れた」「人が助けた」「終わらなかった」の 4 つに分けます。
お客様を映像で見ているのですか?
いいえ。人が映像を見て確かめるのではなく、予約・解錠・写真の受け取りなど、システムに残る記録で測っています。お客様と対面で接することがない店なので、プライバシーを確保しつつ利用状況を確認することを大事にしています。
数字は公開していますか?
していません。分析の結果は社外に出していません。
ほかの記録
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