NOTES

無人店舗のランニングコスト — 人件費が消えたあとに何が残るか

無人店舗は人件費がゼロになりますが、その代わりに何にお金がかかるのか。完全無人のセルフ写真館を運営して分かった、毎月出ていく費用の内訳と、有人店では発生しない無人特有のコストを整理します。

「人件費ゼロ」の次に来る話が、あまり語られない

無人店舗の紹介記事は、たいてい「人件費が削減できます」で終わります。 間違いではありません。当店もスタッフはゼロで、人件費は発生していません。

ただ、実際に運営してみると分かるのは、人件費が消えた場所に、別の費用が入ってくるということです。 しかもその費用は、1件あたりは小さく、種類が多く、気づかないうちに積み上がる性質を持っています。

この記事では、金額そのものではなく「何にお金がかかるのか」という費目の全体像を書きます。 金額は業態と規模で桁が変わるので、他店の数字を写しても意味がありません。 代わりに、見落とされやすい費目を漏れなく挙げることを目的にします。

無人店で毎月出ていくもの

当店(場所を貸す型・完全無人)で毎月発生している費目を、性質ごとに並べます。

無人店の月次費用の費目
区分費目有人店でも発生するか
場所家賃・共益費する
場所水道光熱費(空調・照明・機器の電力)する
場所通信費(回線)する
決済決済手数料(売上に比例)する
仕組み予約・解錠まわりのシステム利用料しない(有人は人が代替)
仕組みクラウド・サーバーの利用料ほぼしない
仕組み監視・遠隔操作系のサービス料しない
備え保険(施設賠償など)する
備え消耗品(清掃用品・備品の補充)する
備え機器の更新積立(PC・タブレット・カメラ等)する(ただし無人は台数が多い)

注目していただきたいのは、「仕組み」の3行です。 ここが有人店には無い費目で、無人店では毎月必ず出ていきます。 有人店ならスタッフが担っていた「受付」「案内」「鍵の開け閉め」「見守り」を、 サービスの月額として買い直しているのが無人店の構造です。

有人店では発生しない、無人だけの費用

1. 止まっていないことを確かめ続ける費用

有人店なら、機器が止まればスタッフがすぐ気づきます。無人店にはその目がありません。 そのため「動いていることを機械に報告させ続ける」仕組みが要ります。 これは有人店にはまったく存在しない費目です。

当店ではこの仕組みを自作しているため直接の月額は小さいのですが、 外部サービスで揃えるなら、監視だけで月数千円から数万円の帯になります。

2. 冗長化の費用

無人店では、1つ壊れると営業が止まります。有人店なら「今日は手書きで対応」ができますが、 無人店にはその逃げ道がありません。結果として、回線・電源・端末のどこかを二重に持つ判断が必要になります。 持たない判断もありますが、その場合は止まった日の売上を捨てることになります。

3. 機器の台数ぶんの更新費

無人店は、人がやっていたことを機械に置き換えた店です。当然、機器の台数が増えます。 PC、タブレット、カメラ、ルーター、スマートロック、センサー。 これらは買った月に一度払って終わりではなく、寿命で割った額を毎月積み立てているのと同じです。 この積立を月次に入れていないと、数年後にまとまった出費が突然来ます。

実際に起きたこと

当店ではこの1年半で、空調の制御が10日間止まっていたこと、案内タブレットの動作が 極端に遅くなったこと、落雷の瞬電でPCが停止したことがありました。 いずれも機器そのものは壊れていませんが、「機器は不調になる前提」で予算を組む必要があることは、はっきり分かりました。

見落とされる最大のコストは、自分の時間

ここまで金銭の話をしてきましたが、実際にもっとも見落とされているのは運営者自身の作業時間です。

無人店は「放っておいても回る店」ではありません。清掃、備品の補充、予約の確認、 機器の様子見、トラブルの一次対応。人を雇っていないということは、それを全部自分がやっているということです。

会計上、この時間はどこにも計上されません。だから「人件費ゼロ」に見えます。 ですが実態としては、自分の時間で人件費を払っているのと変わりません。

  • この時間を減らせているかどうかが、無人化が成功しているかどうかの実質的な指標になる
  • 自動化に投資して月額が増えても、自分の時間が大きく減るなら、それは正しい支出
  • 逆に、月額を惜しんで毎回自分が現地へ行くなら、無人にした意味が薄れる
削ってはいけない時間もある

ひとつ注意があります。改善に使う時間は削らないでください。当店の利用者アンケート(有効回答100件)では、 サービス体験の使いやすさスコアがオープン直後の63.07点から、 仕様変更後には83.25点まで上がりました。 設備も立地も同じで、変えたのは操作の設計だけです。 無人店はシステムを入れて終わりではなく、利用者の声を聞いて直し続けた分だけ体験が良くなります。 ここに使う時間は、費用ではなく投資です。

ランニングコストを見積もるときの順番

これから無人店を検討される方に、順番として勧めたいのは次の形です。

  1. 1
    固定費だけを全部書き出す — 売上に関係なく毎月出ていくものを、 1円単位でなくていいので漏れなく挙げる。上の表を下敷きに使ってください
  2. 2
    その合計を、客単価で割る — 「月に何組来れば固定費が埋まるか」が出ます。 この数字が、その店が成立するかどうかの最初の関門になります
  3. 3
    機器の更新積立を足す — 導入する機器の合計額を、想定寿命の月数で割って足す。 ここを入れ忘れる見積もりが非常に多いところです
  4. 4
    自分の作業時間を時給換算して眺める — 帳簿に載せる必要はありませんが、 見ておくと「この作業は自動化に投資すべきか」の判断がつきます
無人店の損益は固定費で決まる

無人店は、売上が読めない月でも固定費が同じだけ出ていきます。 逆に言えば、固定費をどこまで下げられたかが、そのまま耐久力になります。 集客の工夫より先に、固定費の一覧を作るほうが効きます。

開業前の費用については開業費用の内訳に、収益の出方については収益構造に整理しています。

自分の業態で固定費がどのくらいになりそうか整理したい、という段階であれば、LINEでのご相談も受け付けています。

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よくある質問

無人店舗のランニングコストには何がありますか?

家賃・水道光熱費・通信費に加えて、決済手数料、予約や解錠などのシステム利用料、クラウドの利用料、保険、消耗品、そして機器の更新積立が発生します。人件費が消える代わりに、システム関係の月額が積み上がるのが無人店の特徴です。単価は小さくても本数が多くなるため、契約しているサービスを一覧にしておかないと把握できなくなります。

無人店舗は人件費がゼロになれば利益が出ますか?

人件費が消えることは事実ですが、そのまま利益になるわけではありません。人が担っていた仕事が、システムの利用料と自分の作業時間に置き換わります。この置き換えがうまくいけば損益分岐は確実に下がりますが、置き換えに失敗すると、人件費より高くつくこともあり得ます。

無人店舗の利益率はどのくらいですか?

業態と客単価で大きく変わるため、一律の数字はありません。ただ、無人店の損益は「固定費をいくらに抑えられたか」でほぼ決まります。売上が読めない月でも固定費は出ていくので、月々の固定費を全部書き出して、その金額を何組の来店で埋められるかを先に計算しておくのが確実です。

無人店舗で一番見落とされる費用は何ですか?

機器の更新費用と、自分自身の作業時間です。PC・タブレット・カメラ・ルーターはいずれ壊れます。買った月に一度払って終わりではなく、寿命で割った額を毎月積み立てているのと同じです。作業時間のほうは会計上どこにも出てこないため、実質ゼロとして扱われがちですが、実際には毎月まとまった時間が消えています。

本記事のデータについて

本記事の店舗数・分布などの数値は、当サイトが継続運営する全国セルフ写真館ディレクトリ (全国セルフ写真館 完全ガイド) の調査に基づく「GENICA調べ」の一次データです。出典として「セルフ写真館GENICA調べ (genica-photo.com)」と明記いただければ、メディア・ブログ・資料への引用を歓迎します。

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