NOTES
無人店舗で起きた事件の記録 — 業態・手口・被害額で分類する
無人店舗・無人販売店で報道された事件を、業態・手口・被害額・支払い方式で分類した記録です。2022年以降に報じられた事例を集め、何が狙われているのか、どの支払い方式で何が起きているのかを整理しました。完全無人のセルフ写真館を運営しながら続けている記録です。
無人店舗の話をすると、かなりの確率で「無人販売なんて盗まれて当たり前でしょう」と言われます。 検索でも「無人販売所 盗難 当たり前」「無人販売 やめろ」といった言葉が並びます。
ところが、その言い方の根拠になる数が見当たりません。 防犯や機器の会社が書いた対策記事は数多くありますが、 そこで引かれているのは小売業全体の不明ロスの統計で、 無人店舗のものではありません。 無人店舗で実際に何が起きたのかを1件ずつ数えた記録は、探した範囲では見つかりませんでした。
そこで、報道された事件を集めて分類することにしました。 現在11件(2022年8月〜2026年7月の発生分)を収録しています。
集めているのは報道された事件です。 被害届が出なかったもの、報道に至らなかったものは入りません。 分母が分からないので、盗難率は計算できませんし、しません。
ここで示せるのは「報じられた事件の内訳」だけです。 それでも、何が狙われ、どういう手口が使われているかの傾向は読み取れます。
年別の件数
| 発生年 | 収録件数 |
|---|---|
| 2022年 | 3件 |
| 2023年 | 2件 |
| 2024年 | 1件 |
| 2025年 | 3件 |
| 2026年 | 2件 |
年ごとの増減は、事件が増えたのか報道が増えたのか、 あるいは私が拾えた量が変わっただけなのかを区別できません。 この表から傾向を読むのは無理があるので、件数の推移としては扱わないでください。
店側から見て「どの守りが効いたか」で分けると、4つになりました。
| 手口 | 件数 | 何が起きるか |
|---|---|---|
| 商品持ち去り | 6件 | 支払いの動作そのものが無い。商品を持って出る |
| 決済ごまかし | 2件 | 支払い機器は操作するが、実際には払っていない |
| 設備窃盗 | 1件 | レジや釣銭機など、設備そのものを持ち去る |
| 器物損壊 | 2件 | 壊す・汚す。持ち去りは伴わない |
件数では商品持ち去りが最多です。ただ、被害額でみると順位が入れ替わります。
被害額の大きい順
| 発生 | 業態 | 手口 | 被害額 |
|---|---|---|---|
| 2025/11 | セルフ写真館 | 器物損壊 | 110万円 |
| 2026/07 | スイーツ | 設備窃盗 | 100万円 |
| 2025/08 | トレーディングカード | 器物損壊 | 30万円 |
| 2026/05 | 古着 | 商品持ち去り | 12.3万円 |
| 2024/09 | スイーツ | 決済ごまかし | 2万円 |
金額の上位に来るのは、商品を持ち去られた事件ではなく、設備を持ち去られた事件と、店を壊された事件です。 被害額が判明しているのは7件で、中央値は12.3万円、最大は110万円でした。残り4件は報道に金額が出ていないため、0として混ぜずに除いています。
収録している中で最も新しい事件は、約40kgのセルフレジを コードごと引き抜いて約30秒で持ち去ったものです。 被害は機器本体と中の現金で約100万円。 スイーツを何個持ち去っても届かない額が、一度に出ています。
商品を並べる什器の防犯だけを考えていると、この形は抜けます。「置いてある機械は、それ自体が商品より高い」という当たり前を、 事件の側から思い出させられました。
支払い方式が分かっている事件は3件あり、いずれも現金を扱う仕組みでした。 料金箱、券売機、セルフレジ、現金とキャッシュレスの併用です。
そして「決済ごまかし」に分類した事件は、どちらも現金前提だから成立しています。
- 料金箱の店では、商品をバッグに入れたあと入り口の料金箱で払うそぶりだけ見せて出ていった
- セルフレジの店では、金額を打ち込んで支払いの動作までしたうえで、 現金の代わりにスロットのコインを2枚投入して出ていった
どちらも、防犯カメラには「支払いをしている人」として映ります。 店主が気づくのは在庫や売上が合わないときで、映像を見ても一見しては分からないのがこの手口の厄介なところです。 キャッシュレスのみであれば、決済が通ったかどうかは記録で確定します。
売上が3割下がっても現金をやめた店がある
釣銭機を持ち去られた店は、事件のあとキャッシュレス専用に切り替えています。 報道では、売上が3割ほど下がる見込みを承知したうえで、 それでも現金を扱わない方針にしたと伝えられていました。
無人店舗の設計で、支払い方式は「客が払いやすいか」で選びがちですが、被害額の上限を決めているのも支払い方式だと分かります。 店に現金が置いてなければ、深夜に機械を運び出す動機はそのぶん小さくなります。
| 業態 | 件数 |
|---|---|
| 冷凍食品 | 3件 |
| 古着 | 3件 |
| スイーツ | 2件 |
| 精肉 | 1件 |
| トレーディングカード | 1件 |
| セルフ写真館 | 1件 |
偏りがあります。上位に来るのは単価が高く、持ち出しやすく、換金できる商材です。 収録した事件の一つでは、持ち去られた古着が買い取り店で売られて生活費に充てられていたと報じられていました。 同じ人物が別の無人店でも同じことをしており、2店の被害は計30万円以上とされています。
冷凍食品も繰り返し出てきます。こちらは換金というより、 そのまま消費できるものが並んでいることが関係していそうです。
時間帯
| 時間帯 | 件数 |
|---|---|
| 深夜・早朝 | 3件 |
| 日中 | 1件 |
| 朝 | 1件 |
深夜・早朝が目立ちますが、日中の事件も入っています。 下見をしてから空のバッグを持って戻ってくる形の事件は、昼間に起きていました。 「夜だけ気をつければいい」という話ではないようです。 なお、報道に時刻が出ていないものが6件あるので、 この表は判明している分だけの内訳です。
この記録の中に1件だけ、商品を並べていない無人店の事例があります。 韓国・ソウルのセルフ写真館で起きたもので、手口は窃盗ではなく器物損壊でした。
店内で消火器が噴射され、粉末が壁と床、そして機械の内部まで入り込んで営業できない状態になっています。 清掃費と機器の修理費、備品の交換を合わせた被害は約110万円と伝えられました。 この記録の中で2番目に大きい金額です。
持ち去られる商品が無い業態は、窃盗のリスクはたしかに下がります。 けれど被害がゼロになるわけではなく、形が変わって残るというのが、この事例の読み方だと思っています。
商品が並んでいる店なら、盗られた分だけが損失です。 機械が主役の店では、機械が使えなくなった時点でその日から営業ができません。 損失は被害額そのものより、止まっている期間に効いてきます。
セルフ写真館は、まさに商品を置かない無人店です。 自分の店で同じことが起きたらどうなるかを考えると、 在庫の心配より「止まったときにどれだけ早く戻せるか」のほうが重い、 という結論になります。実際、これまでに書いてきた記録も、 盗難より停電で機械が止まった話のほうが切実でした。
分類と集計だけだと、どうしても数字の話になります。 報道の中で、被害に遭った店の人が語っていた言葉を5件だけ引きます。 こちらで言い換えず、そのまま置きます。
「ある程度のリスクは想定内。でもこれ以上犯罪が増えると、対策のしようがない」
「警察沙汰にしたくないという気持ちもあり、犯人の良心に訴えたが、残念」
「99%のお客さんがちゃんとやってくれているのに、(お金の代わりに)コインまで持ってきたりとか、ちょっと度が過ぎていると思う」
「無人店の良さは、客が店員を気にすることなく好きなモノを選べるところ」
「100万円取り返すことは、スイーツは100万円儲けるのはかなり難しいので、であれば売り上げが下がってもリスクを避けたほうがいいのではないかな」
並べてみて、共通していることが2つありました。
1. どの店も「想定していなかった」とは言っていない
料金箱の店の社長は「ある程度のリスクは想定内」と言い、 レジごと持ち去られた店は売上が3割下がる前提で現金をやめる判断をしています。 無防備に置いていたら盗られた、という話ではなく、織り込んだうえで、線をどこに引き直すかの話をしています。
2. 客を疑う言い方をしていない
スロットのコインを入れられた店主は「99%のお客さんがちゃんとやってくれているのに」と前置きしてから怒っていますし、 古着を持ち去られた店は、被害の翌月も「無人店の良さは、客が店員を気にすることなく好きなモノを選べるところ」と話しています。
無人店を続けている人は、一部の行為と、大多数の客を、分けて話している。 外から「無人でやるほうが悪い」と言われがちなテーマですが、 中の人の言葉はもう少し落ち着いています。
引用はいずれも報道記事からで、出所は各文の下に示しています。 言葉は改変していません。個人名は載せていないため、話し手は役割で記しています。
発生の古い順です。人名と店名は記録していません(理由は次の節に書きました)。 出典はすべてリンクしてあります。
| 発生 | 業態 | 地域 | 手口 | 被害額 | 概要 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2022-08 | 冷凍食品 | 大阪府 | 商品持ち去り | — | 冷凍ギョーザなどを持ち去ったとして50代の男が窃盗容疑で逮捕された。 出典: 産経新聞(2023-11-25) |
| 2022-11-23 | 冷凍食品 | 千葉県 | 決済ごまかし | 1.7万円 | 冷凍ラーメンなどをバッグに入れ、入り口の料金箱で払うそぶりだけ見せて退店。以前から被害が続いており、待機していた警察官がその場で現行犯逮捕した。 出典: 読売新聞(2022-12-11) |
| 2022-11 | 冷凍食品 | 千葉県 | 商品持ち去り | — | 冷凍ギョーザなどを持ち去ったとして50代の男が窃盗容疑で逮捕された。 出典: 読売新聞(2022-12-11) |
| 2023-07 | 精肉 | 愛知県 | 商品持ち去り | — | 牛肉などを持ち去ったとして20〜50代の男3人が窃盗容疑で逮捕された。複数人による事例。 出典: 産経新聞(2023-11-25) |
| 2023-10-23 | 古着 | 大阪府 | 商品持ち去り | — | 一度入店して下見をした人物が、大きなバッグを持って再入店。商品を持って試着室に入り、空のハンガーだけを残して膨らんだバッグとともに退店した。 出典: 産経新聞(2023-11-25) |
| 2024-09-09 | スイーツ | 愛知県 | 決済ごまかし | 2万円 | 手袋をした人物がセルフレジで商品の金額を打ち込み、支払いの動作をしたうえで、現金の代わりにスロットのコインを2枚投入して退店した。 出典: CBC/TBS NEWS DIG(2024-09-12) |
| 2025-08-31 | トレーディングカード | 熊本県 | 器物損壊 | 30万円 | 酒に酔ったとみられる人物が商品ケースを繰り返し壁に打ち付け、約40箱が販売できない状態になった。持ち去りはない。箱の角のへこみで価値が下がる商材だった。 出典: RKK/TBS NEWS DIG(2025-09-23) |
| 2025-09-01 | 古着 | 熊本県 | 商品持ち去り | 1.2万円 | 開店から1か月ほどの24時間営業店でズボン3着が持ち去られた。対策は複数の防犯カメラで出入りを確認する程度しかない状態だった。 出典: 熊本放送/TBS NEWS DIG(2025-09-23) |
| 2025-11 | セルフ写真館 | 韓国 | 器物損壊 | 110万円 | 店内で消火器が噴射され、粉末が壁・床・機械の内部まで広がって営業できない状態になった。同じ人物は数日前にも来店し、遺失物ボックスにあった他人のカードを使った決済や、ブース内での迷惑行為をしていた。持ち去る商品が無い業態で起きた事例。 出典: KOREA WAVE/AFPBB News(2026-03-09) |
| 2026-05-04 | 古着 | 東京都 | 商品持ち去り | 12.3万円 | 長袖シャツなど16点が持ち去られた。同一人物が都内の別の無人店でも古着を持ち去ったとみられ、2店の被害は計30万円以上。持ち去った古着は買い取り店で換金されていた。 出典: 産経新聞(2026-06-10) |
| 2026-07-05 | スイーツ | 岡山県 | 設備窃盗 | 100万円 | 入店した人物が約40kgのセルフレジをコードごと引き抜いて持ち去った。所要は約30秒。自動釣銭機の本体約70万円と中の現金約30万円で被害は約100万円。店は事件後キャッシュレス専用に切り替え、売上が3割ほど下がる見込みを受け入れた。 出典: RSK山陽放送/TBS NEWS DIG(2026-07-17) |
出典はいずれも報道機関の記事です。本文は引用せず、 日付・業態・地域・手口・被害額・支払い方式という事実だけを記録しています。
最後に、この記録の限界をはっきり書いておきます。 数字を出す以上、どこまで言えてどこから言えないかを書かないのは不誠実だと思うので。
| 言えないこと | 理由 |
|---|---|
| 盗難率・発生率 | 分母が分からない。報道された事件しか集められていない |
| 年ごとの増減 | 事件が増えたのか、報道が増えたのか、拾えた量が変わっただけなのかを区別できない |
| 地域差 | 件数が少なすぎる。人口や店舗数で割れる母数もない |
| 業態ごとの危険度 | 同じ理由。ある業態の店が何店あるのかが分からない |
| 対策の効果 | 対策をして「起きなかった」ことは報道されない |
人名と店名を記録していない理由
逮捕の報道は実名で出ることがありますが、この記録には人名を入れていません。不起訴になっても、まとめた側の記録は残り続けます。 報道機関は時間が経てば記事を下げますが、こういうページは下がりません。 分類と集計に個人名は必要ないので、最初から持たないことにしました。
店名も同じ考えです。被害に遭った店の名前を並べても、 読む人にとっての情報量は「業態と地域」とほとんど変わりません。 出典をたどれば分かることを、こちらで一覧にする必要はないと判断しました。
他店の閉店は記録しない
検索していると、被害のあと閉店したという記事も出てきます。 それらはこの記録に入れていません。閉店の理由を外から推し量ることはできないからです。 記録するのは「被害があった」ところまでにしています。
月に一度、検索して新しい事件があれば足しています。 更新の頻度は約束しません。約束すると止まったときに嘘になるので、「いつ時点で何件か」を毎回出す形にしてあります。 現在は2026年7月までの11件です。
考え方のほうは別の記事に書きました。 この記録が「何が起きているか」だとすれば、あちらは 「それを踏まえて、自分の店をどう設計しているか」です → 「無人販売は盗まれて当たり前」は本当か
よくある質問
無人販売所の盗難率はどのくらいですか?
この記録からは出せません。集めているのは報道された事件で、被害届が出なかったものや報道されなかったものが入らないためです。分母が分からない以上、率は計算できません。ここで示しているのは「報じられた事件の内訳」であって、発生率ではありません。
無人店舗で一番多い被害は何ですか?
報道された事件では商品の持ち去りが最も多く見られます。ただし被害額でみると、レジや自動釣銭機など設備そのものを持ち去られた事件、店内を壊された事件のほうが桁が大きくなっています。件数と金額で順位が入れ替わる点が、この記録で分かることの一つです。
現金を扱わなければ被害は防げますか?
現金を置かなければ成立しない手口があるのは確かです。料金箱に払うそぶりだけをする、セルフレジに現金以外のコインを投入するといった手口は、支払いが現金前提だから成立します。釣銭機ごと持ち去られた事件でも、被害の中身は機器本体と中の現金でした。ただし商品の持ち去りや器物損壊は支払い方式と関係なく起きます。
商品を置かない無人店なら安全ですか?
持ち去られる商品が無いぶん窃盗は起きにくくなりますが、被害がゼロになるわけではありません。この記録には、商品を置かない業態で店内を壊され、営業できなくなった事例が入っています。被害額はこの記録の中でも上位でした。守る対象が「商品」から「設備と営業そのもの」に移る、と考えるほうが実態に近いはずです。
この記録はどうやって集めていますか?
報道記事を検索して1件ずつ拾い、業態・地域・手口・被害額・支払い方式に分けて記録しています。人名と店名は記録していません。逮捕時に実名で報じられていても、不起訴になった場合に記録だけが残り続けるためです。出典はすべて記事内にリンクしてあります。
本記事の店舗数・分布などの数値は、当サイトが継続運営する全国セルフ写真館ディレクトリ (全国セルフ写真館 完全ガイド) の調査に基づく「GENICA調べ」の一次データです。出典として「セルフ写真館GENICA調べ (genica-photo.com)」と明記いただければ、メディア・ブログ・資料への引用を歓迎します。
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