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海外レポート
韓国のセルフ写真館が6万ウォンで売っているもの
連載 ・ セルフ写真館の“本場”韓国はいま(全3回)
第2回:有人プレミアム編|6万ウォンで何を売っているのか
第1回では、韓国のセルフ写真館市場が「売上2.4倍・廃業3.5倍」という二極化に入っていることを、国税庁のデータで見ました。今回はその中で、1回5,000円以上を払わせている店が何を売っているのかを分解します。
日本でセルフ写真館というと「安く・気軽に・スタッフなしで」というイメージが強いと思います。韓国の主流は、実はその逆でした。
この記事の結論
- 韓国の高価格帯は有人・予約制。スタッフが案内し、その場でレタッチまでする
- 撮影者に5段階の「段位」をつけ、54,000〜160,000ウォン(約5,900〜17,600円)と価格を変えるブランドがある
- 収益源は撮影だけではない。ホテル・百貨店への出店と、社員証撮影のB2B
本場の主流は「無人」ではない
韓国の有人セルフ写真館は、予約から受け取りまでこう進みます。
- 1ネイバー予約で日時を選ぶ(予約時刻=撮影開始時刻なので10〜20分前の到着が推奨される)
- 2入店。スタッフが照明・リモコン・ポーズを案内する。ウェルカムドリンクが付く店も
- 315〜20分、自分でシャッターを切る
- 4撮った数十枚から15〜20分かけてベストカットを選ぶ
- 5スタッフがその場でレタッチし、印刷とデータを渡す(受け取りまで平均30分以内)
出典:オディティモード公式サイト、黒白空間公式FAQ(いずれも2026年8月5日取得)
注目したいのは「セレクトに15〜20分」を料金に組み込んでいることです。撮影と同じだけの時間を「選ぶ」に使わせ、そこにスタッフが付く。撮影そのものより、選んで仕上げる工程を商品にしているのがこのタイプの正体だと思います。
その証拠に、黒白空間の公式サイトが公開しているレビューのポジティブキーワードは、1位「施設がきれい」に続いて2位「レタッチが上手」、3位「親切」。無人の店では絶対に上位に来ない言葉が並んでいます。
出典:黒白空間公式サイト掲載のレビュー集計(訪問者レビュー9,999件以上、平均4.95)
6万ウォンの中身を分解する
有人セルフ型の2ブランドは、価格も構成も驚くほど似ています。
| 項目 | オディティモード | 黒白空間 |
|---|---|---|
| 基本料金(カラー) | 60,000원 | 50,000원〜 |
| 白黒/ヴィンテージ | 50,000원 | 60,000원〜 |
| 撮影時間 | 20분 | 15분+5분 |
| セレクト時間 | 20분 | 15분 |
| レタッチ・印刷 | 2컷 | 2컷 |
| 原本の全ファイル | 20,000원 | 20,000원 |
| 人数追加(1人) | 10,000원 | 10,000원 |
出典:オディティモード公式PRICEページ/黒白空間公式PRICEページ(2026年8月5日取得)
※1ウォン≒0.11円で換算すると、60,000ウォン=約6,600円、50,000ウォン=約5,500円、20,000ウォン=約2,200円、10,000ウォン=約1,100円。
「原本全ファイル20,000ウォン」まで一致しているのは、偶然というより業界の相場が固まっているということでしょう。基本料金にはこのほか、タイムラプス映像、パウダールームや小物の利用が含まれます。
さらに上の価格帯もあります。フォトマティック(포토매틱)は45〜60分で150,000ウォン(約16,500円)、90分で300,000ウォン(約33,000円)。こちらは原本ファイルが料金に含まれ、90分プランには額縁とアルバムまで付きます。同じ「セルフ写真館」という言葉の中に、5,000ウォンの店と300,000ウォンの店が同居しているわけです。
撮影者に「段位」をつけて値段を変える店
今回いちばん驚いたのが、作家撮影型のシヒョナダ(시현하다)の料金設計です。1人撮影の価格が、撮影する人の等級によって変わります。
| 等級 | 価格 | 円換算 | 条件 |
|---|---|---|---|
| 1段目 | 54,000원 | 約5,900円 | — |
| 2段目 | 68,000원 | 約7,500円 | 1,000名以上の撮影+昇級試験 |
| 3段目 | 84,000원 | 約9,200円 | 3,000名以上の撮影+昇級試験 |
| 4段目 | 110,000원 | 約12,100円 | 5,000名以上+昇級試験、後進の教育が可能 |
| 5段目 | 160,000원 | 約17,600円 | 10,000名以上+昇級試験、全記録家の技術開発と教育を担う首席 |
出典:シヒョナダ公式サイト 各支店ページ「칸」セクション(2026年8月5日取得)
「칸(カン)」は引き出しの段を意味する言葉で、同社は撮影者を「기록가(記録家)」と呼び、その経歴を5段階で公開しています。しかも支店ページには、どの記録家が何段目かが実名で載っている。指名して予約する仕組みです。
写真館の料金が「機材」でも「時間」でもなく「誰が撮るか」で3倍変わる設計は、世界的に見てもかなり珍しいと思います。撮影枚数という客観的な数字と昇級試験を条件に置いているので、値段の根拠が客から見えるのも上手い。
この店は撮影の前に「形容詞カード」を書かせます。どんな自分を撮りたいかを言語化させ、レタッチも客と一緒に画面を見ながら進める。所要は1人でも45分以上、全体で1時間〜1時間半です。証明写真を1,000人撮るプロジェクトから始まったブランドが、いまLA店まで持っている。
ホテルと百貨店の中の写真館
プレミアム型のもうひとつの特徴が、路面店以外への出店です。オディティモードの公式サイトには、提携先を並べたページがあります。
- 新羅ステイ(신라스테이)の館内に常設5店舗(三成・光化門・麻浦・九老・海雲台)。宿泊券+撮影券のパッケージまで商品化
- ロッテ百貨店 大邱店の地下2階に常設店。営業時間も百貨店に合わせている
- 現代百貨店・レスケイプホテルにも「ホテルの中の写真館」「百貨店の中の写真館」として出店
- ザ・現代ソウル、ロッテワールドモール、朝鮮ホテルではポップアップ
出典:オディティモード公式サイト(予約ページ・コラボレーションページ、2026年8月5日取得)
ホテルの中に写真館があり、宿泊券とセットで売られている。これは写真館が商業施設側の集客コンテンツとして扱われているということです。テナントとして家賃を払う側ではなく、人を呼べるから声がかかる側に回っている。
海外にも出ています。フォトマティックは東京・渋谷道玄坂、名古屋・栄チカ、大阪・なんばウォークの3拠点を公式サイトに掲載しています。日本にいる私たちが思っている以上に、韓国ブランドはもう隣にいます。