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海外レポート

韓国のセルフ写真館が6万ウォンで売っているもの(後編)

連載 ・ セルフ写真館の“本場”韓国はいま(全3回)

第2回有人プレミアム編|6万ウォンで何を売っているのか

前編からの続きです

前編では、韓国の有人セルフ写真館が6万ウォンの中に何を入れているのか、そして撮影者に5段階の段位をつけて価格を変えるブランドを見ました。後編では、もうひとつの収益源であるB2Bと、原本ファイルの扱い、そして価格の動きを見ていきます。

本場の主流は「無人」ではない

韓国の有人セルフ写真館は、予約から受け取りまでこう進みます。

  1. 1
    ネイバー予約で日時を選ぶ(予約時刻=撮影開始時刻なので10〜20分前の到着が推奨される)
  2. 2
    入店。スタッフが照明・リモコン・ポーズを案内する。ウェルカムドリンクが付く店も
  3. 3
    15〜20分、自分でシャッターを切る
  4. 4
    撮った数十枚から15〜20分かけてベストカットを選ぶ
  5. 5
    スタッフがその場でレタッチし、印刷とデータを渡す(受け取りまで平均30分以内)

出典:オディティモード公式サイト、黒白空間公式FAQ(いずれも2026年8月5日取得)

注目したいのは「セレクトに15〜20分」を料金に組み込んでいることです。撮影と同じだけの時間を「選ぶ」に使わせ、そこにスタッフが付く。撮影そのものより、選んで仕上げる工程を商品にしているのがこのタイプの正体だと思います。

その証拠に、黒白空間の公式サイトが公開しているレビューのポジティブキーワードは、1位「施設がきれい」に続いて2位「レタッチが上手」、3位「親切」。無人の店では絶対に上位に来ない言葉が並んでいます。

出典:黒白空間公式サイト掲載のレビュー集計(訪問者レビュー9,999件以上、平均4.95)

6万ウォンの中身を分解する

有人セルフ型の2ブランドは、価格も構成も驚くほど似ています。

項目オディティモード黒白空間
基本料金(カラー)60,000원50,000원〜
白黒/ヴィンテージ50,000원60,000원〜
撮影時間20분15분+5분
セレクト時間20분15분
レタッチ・印刷2컷2컷
原本の全ファイル20,000원20,000원
人数追加(1人)10,000원10,000원

出典:オディティモード公式PRICEページ/黒白空間公式PRICEページ(2026年8月5日取得)

※1ウォン≒0.11円で換算すると、60,000ウォン=約6,600円、50,000ウォン=約5,500円、20,000ウォン=約2,200円、10,000ウォン=約1,100円。

「原本全ファイル20,000ウォン」まで一致しているのは、偶然というより業界の相場が固まっているということでしょう。基本料金にはこのほか、タイムラプス映像、パウダールームや小物の利用が含まれます。

POINT
オディティモードは公式予約ページに掲載された店舗を数えると18店舗(うちホテル内5、百貨店内1)。黒白空間はソウル市内に5店舗。両ブランドとも、この記事の執筆時点で公式サイトから店舗一覧を確認できます。

さらに上の価格帯もあります。フォトマティック(포토매틱)は45〜60分で150,000ウォン(約16,500円)、90分で300,000ウォン(約33,000円)。こちらは原本ファイルが料金に含まれ、90分プランには額縁とアルバムまで付きます。同じ「セルフ写真館」という言葉の中に、5,000ウォンの店と300,000ウォンの店が同居しているわけです。

撮影者に「段位」をつけて値段を変える店

今回いちばん驚いたのが、作家撮影型のシヒョナダ(시현하다)の料金設計です。1人撮影の価格が、撮影する人の等級によって変わります

等級価格円換算条件
1段目54,000원約5,900円
2段目68,000원約7,500円1,000名以上の撮影+昇級試験
3段目84,000원約9,200円3,000名以上の撮影+昇級試験
4段目110,000원約12,100円5,000名以上+昇級試験、後進の教育が可能
5段目160,000원約17,600円10,000名以上+昇級試験、全記録家の技術開発と教育を担う首席

出典:シヒョナダ公式サイト 各支店ページ「칸」セクション(2026年8月5日取得)

「칸(カン)」は引き出しの段を意味する言葉で、同社は撮影者を「기록가(記録家)」と呼び、その経歴を5段階で公開しています。しかも支店ページには、どの記録家が何段目かが実名で載っている。指名して予約する仕組みです。

写真館の料金が「機材」でも「時間」でもなく「誰が撮るか」で3倍変わる設計は、世界的に見てもかなり珍しいと思います。撮影枚数という客観的な数字と昇級試験を条件に置いているので、値段の根拠が客から見えるのも上手い。

この店は撮影の前に「形容詞カード」を書かせます。どんな自分を撮りたいかを言語化させ、レタッチも客と一緒に画面を見ながら進める。所要は1人でも45分以上、全体で1時間〜1時間半です。証明写真を1,000人撮るプロジェクトから始まったブランドが、いまLA店まで持っている。

ホテルと百貨店の中の写真館

プレミアム型のもうひとつの特徴が、路面店以外への出店です。オディティモードの公式サイトには、提携先を並べたページがあります。

  • 新羅ステイ(신라스테이)の館内に常設5店舗(三成・光化門・麻浦・九老・海雲台)。宿泊券+撮影券のパッケージまで商品化
  • ロッテ百貨店 大邱店の地下2階に常設店。営業時間も百貨店に合わせている
  • 現代百貨店・レスケイプホテルにも「ホテルの中の写真館」「百貨店の中の写真館」として出店
  • ザ・現代ソウル、ロッテワールドモール、朝鮮ホテルではポップアップ

出典:オディティモード公式サイト(予約ページ・コラボレーションページ、2026年8月5日取得)

ホテルの中に写真館があり、宿泊券とセットで売られている。これは写真館が商業施設側の集客コンテンツとして扱われているということです。テナントとして家賃を払う側ではなく、人を呼べるから声がかかる側に回っている。

海外にも出ています。フォトマティックは東京・渋谷道玄坂、名古屋・栄チカ、大阪・なんばウォークの3拠点を公式サイトに掲載しています。日本にいる私たちが思っている以上に、韓国ブランドはもう隣にいます。

社員証撮影という、もうひとつの柱

そして、日本ではほとんど紹介されていないのがB2Bです。オディティモードは公式に4つのカテゴリで実績を掲げています。

種類実例
社員証撮影SKブロードバンド、三星生命、バケットプレイス(オーハウス運営)
撮影券バウチャーフェラガモ(顧客ギフト用に200枚)、ウリ銀行、ミュージカル「アイーダ」の観覧券セット
企業ポップアップ現代自動車の社内フォトスタジオ、ロコのコンサート会場

出典:オディティモード公式コラボレーションページ(2026年8月5日取得)

シヒョナダも「시현하다 비즈니스」として法人事業を持ち、Googleスタートアップ・三星物産・現代自動車などの実績を公開しています。運用条件が生々しくて、1人あたり10分、作家1人が1日最大35人、2人体制なら1日70人。相談カードと同意書の記入まで含めると1人15〜20分。完全に工業的な設計です。

しかも前払い制。契約書を作り、撮影前に全額を決済してもらう。レタッチの納品は撮影日から1か月半〜2か月後。個人向けの「その場で30分以内」とは、まったく別の商売として設計されています。

GENICAGENICA
有人ということは、当然人件費がかかります。だからこそウェルカムドリンクやその場でのレタッチのような付加価値でしっかり稼ぐ──この割り切りは理にかなっていると感じました。無人のGENICAとは逆のアプローチですが、「何にお金を払ってもらうのか」を明確にしている点は共通だと思います。

原本ファイルの扱いが、業態を分ける

横断して調べていて、いちばんきれいに線が引けたのがここでした。

POINT
有人セルフ型(オディティモード・黒白空間)は、原本の全ファイルを20,000ウォン(約2,200円)で売る
作家撮影型(シヒョナダ)は、原本を売らない。法人撮影では当日すべて削除すると公式に明記。

同社の言い分は「シヒョナダは1枚の写真で語る空間です」。レタッチしていない写真は作品ではないので渡さない、という立場です。撮った枚数ではなく仕上げた1枚を売っている以上、原本を渡したら商品が壊れる。筋は通っています。

逆に有人セルフ型が原本を売れるのは、商品が「撮影という体験の時間」だからです。どちらが正しいという話ではなく、何を商品と定義したかの違いがそのまま原本の扱いに出ている。ここは日本のセルフ写真館を考えるときにも、そのまま使える補助線だと思いました。

値上げする店と、実質値引きする店

第1回で見たとおり、市場は過当競争に入っています。価格はどう動いているのか。ここも公式サイトに答えがありました。

シヒョナダは2024年1月の撮影分から、1段目と2段目の記録家の料金を引き上げたと自社サイトに明記しています。値下げ競争に加わらず、上げた。

注意
一方、黒白空間の価格ページには小さくこう書かれています。「ネイバー予約時に最大20,000ウォン(約2,200円)の割引クーポンを適用した価格です」。つまり表示されている50,000ウォンは、すでに2万ウォン引かれたあとの数字ということになります。

値上げを公言するブランドと、割引を織り込んだ価格を表示するブランド。同じ「5〜6万ウォン(約5,500〜6,600円)」という水準に見えて、中身の体力はまったく違う可能性があります。表示価格だけを比べても実態が見えないのは、どこの国でも同じですね。

ちなみに、撤退も起きています。シヒョナダの北村ハウス店は営業を終了し、所属していた記録家3名は堂山アーカイブ店へ異動したと公式に告知されています。プレミアム帯だから安泰、ということはないようです。

福島の無人店から見て

6万ウォン、日本円でおよそ6,600円。この金額を見て「高い」と感じるか「妥当」と感じるかは、何が含まれているかを知っているかどうかで変わります。撮影20分・セレクト20分・スタッフのレタッチ・印刷・タイムラプス・ドリンク。分解してみると、値段の理由がひとつずつ説明できるように設計されていました。

GENICAGENICA
GENICAは無人なので、韓国のプレミアム型と同じ売り方はできません。でも「価格の理由を説明できる状態にしておく」ことは、無人でもできると思っています。うちが料金の中に何を入れているのか、なぜその時間なのか。ここを曖昧にしたまま安さだけで勝負すると、韓国で起きたことと同じ道をたどる気がしています。

次回はいよいよ無人型です。韓国の無人店が客に何をやらせているのか、鍵はどう渡しているのか、そして無人店舗の窃盗が5年で3倍に増えたという警察庁のデータまで。GENICAと同じ土俵の話を、実例つきで見ていきます。

よくある質問

Q韓国のセルフ写真館はスタッフがいるの?
プレミアム型はいます。オディティモードや黒白空間のような有人・予約制の店では、スタッフが照明やリモコンの使い方を案内し、撮影後はその場でレタッチと印刷まで行います。レビューで上位に来るキーワードが「レタッチが上手」「親切」であることからも、接客込みの業態だとわかります。
Q韓国の有人セルフ写真館の料金はいくら?
オディティモードはカラー60,000ウォン・白黒50,000ウォン(2人基準、撮影20分+セレクト20分)。黒白空間は50,000ウォン〜・ヴィンテージ背景60,000ウォン〜。フォトマティックは45〜60分で150,000ウォン、90分で300,000ウォンです(各公式サイト、2026年8月時点)。
Q撮影した写真の元データはもらえる?
業態によって正反対です。有人セルフ型のオディティモード・黒白空間は「原本全ファイル20,000ウォン」で販売します。一方、作家撮影型のシヒョナダは原本を提供せず、法人撮影では当日すべて削除すると公式に明記しています。
Qヘアメイクはしてもらえる?
今回調べた有人プレミアム各社は、ヘアメイクを自社サービスとしては提供していませんでした。シヒョナダは「提供しない(一部店舗に提携業者あり)」と明記、黒白空間はパウダールームとヘアアイロンを無料開放という形です。

この記事の調べ方

料金・店舗数・サービス内容は、すべて各ブランドの韓国語公式サイトを2026年8月5日に直接取得して確認した数値です(オディティモード odtmode.com、黒白空間 bnwstudio.kr、シヒョナダ sihyunhada.com、フォトマティック photomatic.co.kr)。伝聞や日本語のまとめ記事は使用していません。金額は原文のウォン表記のままとし、概算には1ウォン=0.11円を用いました。なお、これらのブランドの開業費用・加盟条件は各社とも非公開のため、本記事では扱っていません。

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