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海外レポート
韓国のセルフ写真館はいま──売上2.4倍の裏で、廃業は3.5倍
連載 ・ セルフ写真館の“本場”韓国はいま(全3回)
第1回:市場編|売上2.4倍の裏で、廃業は3.5倍
こんにちは、セルフ写真館GENICAです。
GENICAが福島で運営している「完全無人セルフ写真館」というスタイル。実はそのルーツのひとつは、お隣・韓国にあります。ただ、日本語で読める韓国のセルフ写真館の情報は、どうしても「流行っている」「おしゃれ」という話に寄りがちです。
そこで今回は、韓国語の公式サイト・現地メディア・そして公的機関の統計を直接当たって、市場の実数を洗い直しました。分量が大きくなったので3回に分けます。第1回は市場編、第2回は有人プレミアム型の商売の仕組み、第3回は無人型の運用と最新技術です。
※金額はすべて韓国ウォンの原文表記のままにし、必要な箇所だけ1ウォン=0.11円で概算を添えました。数字には発表主体と発表日を明記しています。
この記事の結論
- 即席写真館の売上は4年で2.4倍。ただし廃業は同期間で3.5倍
- 「セルフ写真館」は3つの業態の総称。価格帯は数千ウォン〜30万ウォン(約3万3,000円)まで開く
- 客単価は8,693ウォン(約950円)、利用は月1.27回。10代が最も頻繁に通う
まず「セルフ写真館」を3つに分ける
調べはじめてすぐに気づいたのは、韓国語の「셀프사진관(セルプサジングァン)」が性格の違う3業態の総称になっていることです。ここを分けないまま数字を並べると、必ず話が噛み合わなくなります。
| 業態 | 中身 | 価格帯 |
|---|---|---|
| ①フォトブース型 | 筐体を数台並べた無人店。人生四カット、フォトイズム、ハルフィルムなど | 4,000〜5,000원 |
| ②有人セルフ型 | 個室でスタッフの案内を受け、自分でシャッターを切る予約制。オディティモードなど | 50,000〜60,000원 |
| ③作家撮影型 | 写真家が撮るが、思想はセルフ写真館寄り。シヒョナダ、ムルナム写真館など | 54,000〜450,000원 |
そして、日本で「セルフ写真館」と呼ばれている業態──1時間単位で個室を貸し、客が自分でカメラを操作する形──は、韓国ではむしろ「셀프스튜디오(セルフスタジオ)」「렌탈스튜디오(レンタルスタジオ)」と呼ばれることが多い。GENICAに一番近いのはここです。
国税庁データ:売上2.4倍、廃業3.5倍
最も確度が高いのは、韓国国税庁の課税標準データです。2026年2月17日、国会議員室が国税庁から提出を受けた資料として韓国各紙が一斉に報じました。
| 年 | 売上(課税標準) | 円換算 | 廃業件数 |
|---|---|---|---|
| 2020年 | 1,344억원 | 約148億円 | 176건 |
| 2021年 | 1,337억원 | 約147億円 | 195건 |
| 2022年 | 2,471억원 | 約272億円 | 296건 |
| 2023年 | 2,906억원 | 約320億円 | 514건 |
| 2024年 | 3,196억원 | 約352億円 | 611건 |
出典:韓国国税庁(国会議員室への提出資料、2026年2月17日)。韓国経済新聞・デジタルタイムズ・ヘラルド経済・ソウル経済・イーデイリーが同一データを報道。
売上は4年で約2.4倍。ここだけ見れば絵に描いたような成長市場です。ところが同じ資料の廃業件数は176件から611件へ、約3.5倍。伸びているのは市場だけで、個々の店は退場し続けている、という構図がはっきり出ています。
さらに面白いのは、同じ記事が比較対象に置いたクレーンゲーム店(인형뽑기방)です。こちらは売上が2020年460億ウォン(約51億円)から2024年1,241億ウォン(約137億円)へ伸びる一方、廃業は979件から506件へ半減しています。
同じ「MZ世代向けの無人業態」で、一方は売上増+廃業増、もう一方は売上増+廃業減。クレーンゲーム店は先に過当競争を通り抜けて整理が済み、写真館はいまその真ん中にいる──そう読むのが自然だと思います。
最大手が縮んでいる
市場全体が伸びていても、トップブランドが伸びているとは限りません。フォトブース型の最大手「인생네컷(人生四カット)」の加盟店数の推移がそれを示しています。
- 2021年 239店 → 2022年 401店(ピーク)→ 2023年 383店 → 2025年時点 330店規模
- 運営会社の売上:2022年 254億ウォン(約28億円)→ 2023年 225億ウォン → 2024年 190億ウォン台(約21億円)
- 2024年は営業損失47億ウォン(約5億2,000万円)
出典:ビズハンクック「무인사진관 시장」(2025年6月2日、朴恵娜記者)
加盟店の数字はもうひとつ厳しいものがあります。公正取引委員会に登録される情報公開書をもとにした報道では、人生四カットの加盟店平均売上は8,880万ウォン(約977万円)に対し、開業費用が9,995万ウォン(約1,100万円)。平均的な店は、1年分の売上をまるごと当てても開業費を回収できていないということです。
一方で同じ資料では、ハルフィルムの加盟店平均売上は開業費用の4倍を超えるとされています。ブランドによって差が大きく、「セルフ写真館は儲かる/儲からない」という一括りの議論が成り立たないこともわかります。
130mに5店舗、そして中古機材の投げ売り
なぜ廃業が増えるのか。現地メディアが挙げる理由は明快で、狭い商圏に同業が密集したことです。
- ソウル・城水洞(성수동)では130m圏内に5店舗
- 慶州の黄理団キル(황리단길)には無人写真館が16店舗密集
- 弘大・城水などでは1エリアに30店舗以上が集まる例も
出典:ビズハンクック(2025年6月2日)、個人ブログによる商圏調査(2023年1月)、業界まとめ(2026年7月)
そして市場の温度がいちばん露骨に出るのが、中古機材の値段です。フォトキオスクは新品で1,000万ウォン(約110万円)を超えますが、
出典:ビズハンクック(2025年6月2日)
新品の1/5から1/10です。撤退する店が売りに出す機械が市場に溢れている、という以外に説明のつかない値崩れ方だと思います。