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【内製化】無人店舗のシステムを全部内製化したら無敵になった話|外部サービスのジレンマと、1か月半で分かったメリット・デメリット

外部サービスはハードルを下げてくれる。代わりに月額と、仕様に店を合わせる試行錯誤が残る。全部内製して何が良いかは、フルカスタマイズできること。その代わり、できない理由は全部自分の側に来た。

この記事の要点

  • 外部のサービスは無人店舗のハードルを下げてくれる。代わりに、月額と「そのサービスの仕様に沿って店を試行錯誤する」ことが残る。当店は 1 年半でそのジレンマに耐えられなくなった
  • 2026 年 6 月に出た Fable 5 で「これで全部作っちゃおう」と決め、約 3 か月で GENICA OS を作って 9 月 26 日に切り替えた。全部とは、店の動き方を決める部分(つなぎ方・流れ)を全部自分で持つという意味で、決済・LINE・機器・クラウドは今も外のもの
  • 無敵の中身は、フルカスタマイズできること。「これ便利そうだな」「これと連携したいな」と思ったものを、全部実装できる。その代わり、直すのも守るのも自分で、費用も必ず安くなるわけではない
目次(9項目)
  1. 01外部サービスは、何を助けてくれて、何が壁になるのか
  2. 02なぜ「全部作る」になったのか
  3. 03「全部」とは、どこまでを自分で作ったのか
  4. 04今、GENICA OS には何があるのか
  5. 05外部に頼らなくなって、何ができるようになったのか
  6. 06代わりに、何を引き受けることになったのか
  7. 07費用は、安くなるのか
  8. 08「無敵」とは、何のことか
  9. 09この記事の限界

福島市で完全無人のセルフ写真館を運営しています。2025 年 2 月に開けて、2026 年 9 月 26 日に、予約から鍵、店内の機器、写真の受け取り、運営者への報告までを、自分で作ったシステム「GENICA OS」に切り替えました。それから 1 か月半ほど動かしています。

なぜ作ったか、何ができるか、どう作ったかは、すでに特集として書きました(なぜ作ったか・全体像・6 月から 9 月までの年表・3D で見る 8 場面)。この記事はその続きで、2 つのことを書きます。1 つは、外部のサービスで無人店舗を組むときのジレンマが、当店だけの話ではないこと。もう 1 つは、外に頼らなくなって 1 か月半で分かった、メリットとデメリットです。

題に「無敵」と書きました。先に意味を決めておくと、フルカスタマイズできる、ということです。「これ便利そうだな」「これと連携したいな」と思ったものを、全部実装できる。できない理由が、外のサービスの仕様の中に無くなった。それ以上でも、それ以下でもありません。

無人店舗をやる人には、それぞれ理想の店の形があると思います。お客様にこう動いてほしい、店はこう迎えたい、という形です。

その形に向かうとき、最初に手を伸ばすのが外部のサービスです。予約システム、暗証番号で開ける解錠のサービス、決済、写真を渡す仕組み。契約すれば翌日から使えます。当店も開店のときは、こうした既製品を組み合わせて始めました。それで店は開きましたし、1 年半はその上で営業できました。外のサービスに助けられて店を始めた、というのが当店の事実です。

壁になるのは、その先です。

1 つは、ランニングコストです。サービスごとの月額は 1 つずつは小さくても、無人店舗は予約・解錠・決済・写真と何本も要るので、合計が無視できない額になります(無人店舗に毎月かかる費用はランニングコストの記事に整理しています)。

もう 1 つは、店の試行錯誤を、そのサービスの仕様に沿ってやることになる点です。サービスとサービスの間には連携の機能が無いので、無理くり繋いでいました。理想どおりのスムーズな連携はできませんでした。これは特定のサービスの話ではなく、どれを選んでも同じです。無人店舗をまるごと支える完成品は売っていないので、どこかに隙間が残ります(既製品で揃うもの、揃わないもの)。当店の場合は、入口と割引がその隙間でした。

POINT

「簡単に始められる」と「店を思いどおりにできない」が同じところから出ている。これが、無人店舗を外部サービスで組むときのジレンマです。

当店は、そのジレンマの上で 1 年半ほど営業しました。耐えられなくなったころ、2026 年 6 月 9 日に Claude の Fable 5 が出ました。「これで全部作っちゃおう!」と思って、全部内製することにしました。

私はエンジニアではなく、平日は仙台で会社員をしています。それでも作ると決めた理由は、費用ではありません。思い通りにしたいからです。やるなら徹底的にお客様が迷わない、迷う前にシステムで誘導する形を作りたかった。もう 1 つ、他店舗展開も考えると、外部サービスに依存したくありませんでした。

設計書が 6 月 27 日にそろい、7 月 1 日に実装を始め、9 月 26 日に切り替えました。約 3 か月です。切替の日は何度も動きましたし、7 月の切替は見送って、店を閉めずに別の試験店で通して試しました。その経緯は年表の記事にあります。

ここは正直に書いておきます。「全部内製」と言っても、部品まで自分で作ったわけではありません。

やめて、自分で作ったもの

  • 予約システム
  • 暗証番号で開ける解錠の仕組み
  • 写真の受け渡しの仕組み
  • 機器を時刻表で動かしていた仕組み
  • 問い合わせとアンケートのフォーム
  • HP のチャット(11 月 2 日に、外部のチャットサービスから自作に替えました)

今も外のものを使っているもの

  • 決済(カード会社の決済サービス)
  • LINE 公式アカウント
  • 鍵や家電の機器そのもの
  • サーバーとデータベースのクラウド

つまり当店の「全部」は、店の動き方を決める部分、つまりつなぎ方と流れを全部自分で持つ、という意味です。部品は外のものを使い、部品と部品の間を自分で書いた。外のサービスの「仕様に合わせる」側から、「仕様を決める」側に回った、と言い換えてもいいと思います。

名前を付けたのは、本番で動いていて、よその店に無いか珍しいものだけです。1 行ずつ並べます。中身は全体像と3D の 8 場面に書いたので、ここでは重ねません。

芯

ワンパス
1 つのご予約が、鍵・案内・機器・写真・掃除・報告まで全部を通す

お客様が使うもの

スマホキー
ご予約の時間だけ、LINE のボタンで入口の鍵が開く
おなまえコール
入店すると、名字でお迎えする店内の声
その場延長
撮影中にスマホから延長でき、店内の声と画面にすぐ出る
はいチーズ/笑顔でパシャ!/カウントダウン
撮り方 3 つ
ライブアルバム
撮るたびに写真がスマホに並び、一緒に来た人にもすぐ共有できる
じぶんで変更
日時の変更をマイページで。差額も自動で精算

店が自分で動くもの

オートパイロット
ご予約に合わせて照明・空調・空気清浄機・音楽・画面・掃除機が動く
朝晩セルフチェック
店が朝と晩に自分で 1 枚撮って確かめ、私の LINE に報告する。以前は母が朝晩見回っていた
みまもり
店の PC・カメラ・画面を見張り、止まったら自分で入れ直す
地震ストップ
震度 5 強以上なら、その日の受付を自動で閉じる

運営者が使うもの

レールスコア
お客様が人の手を借りずに予約から退店まで進めた割合
来店ルート
どこから来たかが予約まで追える
GENICA OS コンソール
管理画面

名前の無いものも足しておくと、20〜120 分を 10 分刻みで選べる予約、予約と同じ単価の延長、クーポンやはじめまして割などの割引、カードと PayPay の支払い、ペット連れを予約のときに聞くこと、HP の AI チャットです。

全部内製すると何が良いか。一言でいえば、フルカスタマイズできることです。「これ便利そうだな」「これと連携したいな」と思ったものを、全部実装できる。外のサービスの上では、思いついても、そのサービスが対応しているかで決まっていました。今は、思いついたら作れるかどうかだけです。

切り替えて 1 か月半で、実際にそうやって形にしたものを挙げます。どれも「便利そう」「連携したい」から始まったものです。

  • 予約と店の機器を 1 本につないだ。ワンパスです。予約は予約、鍵は鍵、機器は時刻表、と別々だったものを、1 つのご予約が全部を通す形にしました。人の見回りも、店の自己点検に置き換えました。母が朝晩店に行って撮れるかを確かめていたのが、店のほうが確かめて私に報告してくる形になりました。
  • 料金の形を自分で決められる。可変長の予約、延長が予約と同じ単価、クーポン、条件つきの割引の仕組み。外の予約システムでは、条件つきの価格は作れませんでした。前のシステムの時代は、割引の機能がほぼ無かったので、割引で来店のきっかけを作ること自体ができませんでした。
  • お客様がどこから来て、どこで止まったかが分かる。HP のどこを見て予約に来たか、支払いの途中で戻ったか、が記録に残ります。以前の友だち追加のリンクでは、経路を予約まで運べませんでした。
  • HP のチャットも自作に替えた。11 月 2 日に、外部のチャットサービスから GENICA OS の中の自作に替えました。
  • 機能ごとにボタン 1 つで戻せる。新旧の切り替えも戻すのも、管理画面のボタンです。現地に人がいない店では、戻せることがそのまま安全です。
  • 次に「連携したい」と思ったものも、作り始めている。今、お客様が使っている AI(ChatGPT など)から当店の空きと、その場で計算した料金を確かめられる窓口を作り始めました。まだ公開していないので、ここでは「作り始めた」までです。外の予約システムの上では、こういうものは、そのサービスが対応してくれるのを待つしかありませんでした。
  • 多店舗にするとき、店ごとの外部契約を増やさずに済む方向。他店舗展開を考えると外部サービスに依存したくない、というのが作る前からの考えで、ここはまだ検討の段階です。断定はしません。

ここも正直に書きます。

  • 直すのも守るのも、全部自分。障害が起きたときの電話先がありません。セキュリティの手当ても自分の責任です。理解していないと致命的なミスや脆弱性につながるので、AI に書いてもらったものでも、最後は自分の目でチェックしています。
  • 一人で作るので、時間がかかる。一番大変なのはシステム開発です。会社員をしながら、開発した日は週 5 日ほどありました。適当なプロンプトで続けると辻褄が合わなくなるので、方向性を合わせることに手間をかけています。
  • 現地で確かめられるのは週末だけ。机の上では出なかった不具合が、試験店で通して試すと出ました。
  • 切り替えの前後に出た困りごとも、全部自分で受ける。切り替えの前の試験で、LINE の中の支払い画面だと PayPay で払ったあと元の画面に戻れないと分かり、外のブラウザで開く形に変えました。切り替えてからは、支払いの途中で時間切れになる方が出ました。「写真は自動でスマホに入る」と思った方もいて、案内を直しました。どれも、気づくのも直すのも自分です。

外部サービスに頼っていたときと今を、場面ごとに並べます。

場面外部サービスに頼っていたとき今(GENICA OS)
料金・割引決まった枠。条件つきの価格は作れず、割引の機能もほぼ無い10 分刻み・延長も同じ単価・クーポン・条件つきの割引
お客様の経路友だち追加のリンクでは、どこから来たかを予約まで運べないHP のどこを見て、どこで止まったかが予約ごとに残る
鍵と機器予約は予約、鍵は鍵、機器は時刻表。間は無理くり繋ぐ1 つのご予約が全部を通す(ワンパス)
店の点検家族が朝晩、店に行って確かめる店が朝晩に自分で確かめて、私の LINE に報告
「便利そう」「連携したい」と思ったときそのサービスが対応しているかで決まる全部実装できる(フルカスタマイズ)
できないことの理由サービスの仕様自分がまだ作っていない、の 1 つだけ
直す人・守る人サービス側(連絡先がある)自分(連絡先は無い)
作る時間契約すれば翌日から設計から切替まで約 3 か月。一人で、会社員をしながら
月々の費用サービスごとの月額の合計クラウドの費用。忙しくなるほど増える

「内製すれば安い」と思われやすいので、ここも書いておきます。必ず安くなるわけではありません。

今の固定費は、以前の予約システムの月額を下回る見積もりです(9 月の時点)。ただ、自分で持っているのはクラウドの上の仕組みなので、店が忙しくなって予約や通知が増えると、クラウドの費用が増えます。その見込みでは、以前の月額を上回りえます。つまり、安くするために作ったのではなく、思い通りにするために作って、費用は「今は安く、忙しくなれば高くなりうる」というのが当店の見立てです。

切り替えて 1 か月半で、できないことはまだあります。清掃と原状回復は人の仕事ですし、宿題も上に書いたとおりです。

それでも、全部内製して何が良いかは、はっきりしています。「これ便利そうだな」「これと連携したいな」と思ったものを、全部実装できる。フルカスタマイズできる。できない理由の置き場所が変わって、以前は「このサービスではできない」だったのが、今は「まだ自分が作っていない」の 1 つだけです。お客様の声を聞いて、自分で直せる。やりたいことを、サービスの対応を待たずに足せる。できない理由が外に無い、という意味で、無敵と書きました。

同時に、できない理由が全部自分の側に来た、ということでもあります。その覚悟とセットで、です。

外部サービスに頼らなくなって
できるようになった「便利そう」「連携したい」と思ったものを全部実装できる(フルカスタマイズ)。予約と機器が 1 本/料金と割引を自分で決める/経路と止まった場所が分かる/HP のチャットを自作に/お客様の AI から空きと料金を確かめる窓口を作り始めた/ボタンで戻せる/多店舗で契約を増やさない方向
引き受けた直す・守るのは自分/一人で作るので時間がかかる/現地で確かめるのは週末だけ/切り替えの前後の困りごとも全部自分の宿題/費用は忙しくなるほど増える

当店は、既製品で店を開き、1 年半営業して、耐えられなくなってから作りました。作るかどうかの分かれ目は、費用ではなく、「サービスの仕様に店を合わせる試行錯誤」をまだ続けられるかどうかだと思います。それが続けられるうちは、外のサービスのほうが早い。続けられなくなったとき、今は AI のコーディング支援があるので、エンジニアでなくても作れる道があります。コードは AI に書いてもらい、何を作るかの設計と確認は自分でやる。当店はその形で作りました(無いのなら 作ってしまえ AIで)。

  • 切り替えてから 1 か月半の話です。1 年動かしたときのメリット・デメリットは、まだ分かりません
  • 費用の比較は、当店の今の予約の規模での見込みです。金額はここでは書いていません
  • 「以前はできなかった」は、当店が使っていたサービスでの話で、ほかのサービスで同じかは確かめていません
  • メリットの多くは「できるようになった」までで、それが予約や売上にどう効いたかの数字は、ここでは出していません
  • 多店舗の話は検討の段階で、実際に 2 店目で動かした結果ではありません

仕組みの作り(使っているサービスの組み合わせ・設定・鍵や機器の連動の方法・しきい値・案内の文面)は、当店の運営そのものなので書いていません。予約の件数や売上、レールスコアの結果も同じです。

無人店舗の仕組みを、既製品で組むか、自分で作るか。同じことを考えている方は、LINE で気軽にどうぞ。私の店で試したことは、聞かれたときにお話しします。

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よくある質問

無人店舗のシステムを全部内製化すると、何が良いのですか?

フルカスタマイズできることです。「これ便利そうだな」「これと連携したいな」と思ったものを、全部実装できます。外部サービスの上では、そのサービスが対応しているかで決まっていたことが、作るかどうかだけになりました。

全部とは、決済や LINE まで自分で作ったのですか?

いいえ。決済・LINE 公式アカウント・鍵や家電の機器そのもの・サーバーとデータベースのクラウドは、今も外のものを使っています。自分で作ったのは、予約・解錠の仕組み・写真の受け渡し・機器の動かし方など、店の動き方を決める部分(つなぎ方と流れ)です。

内製化すると費用は安くなりますか?

必ず安くなるわけではありません。当店の見積もりでは、今の固定費は以前の予約システムの月額を下回りますが、店が忙しくなるとクラウドの費用が増えて上回りえます。当店が作った理由は費用ではなく、思い通りにしたいからです。

内製化のデメリットは何ですか?

直すのも守るのも全部自分になることです。障害が起きたときの電話先はありませんし、セキュリティの手当ても自分の責任です。一人で作るので時間もかかります。

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